きっかけは先輩の無茶ぶり「新しい点字」開発の裏 20代の若き発明家「112番目のアイデア」だった
2021年には、誰もが参加できるスポーツを広める世界ゆるスポーツ協会(澤田智洋会長)のメンバーと、ARを用いた新しいスポーツ「ARゆるスポーツ」を開発。リモート環境を活用してコロナ禍の運動不足とコミュニケーション不足を解決できる点が評価され、2021年度のグッドデザイン賞を受賞した。
「人と人とがつながったり、コミュニケーションが始まったりする”きっかけ”や”仕掛け”を生み出すことを意識して、モノづくりをしていますね」
そんな高橋さんが最初に世に送り出した発明品が、前述したブレイルノイエだ。点字と墨字(書いたり印刷したりした文字)を重ね合わせることで、視覚障がい者は触覚で、晴眼者は視覚で文字の意味を理解できるようになっている。
発明のきっかけは福祉施設への訪問
高橋さんがブレイルノイエのアイデアを思いついたのは、2017年の夏。仕事で福祉施設を訪問したことがきっかけだ。施設で視覚障がい者と話したときに、点字の面白さを教えてもらう。
「仲良くなった視覚障がい者の方に、『高橋くん、点字を読めれば暗闇でも本を読めるよ』と言われて。そういう発想が自分の中になかったので、衝撃を受けました。ほかの方には『点字はもともと、軍事用途で開発されたんだよ』という話を教えてもらったり、僕にいろんな発見をさせてくれましたね」
点字が誕生したのは、1825年。自身も視覚障がい者だったフランスのルイ・ブライユが考案した。ブライユは、軍事用の暗号「ソノグラフィー(夜間書法)」を改良して点字を生み出したとされている。
高橋さんはそうした点字の歴史や面白さに触れて、「自分も点字を読みたい」と考えた。そしてブレイルノイエの原案となる「目で読める点字」を思いつき、112番目のアイデアとして発明ノートに書きとめた。
「ブレイルノイエは、最初にアイデアを書いたときから『これは何だか面白くなりそうだぞ』という予感がありました」
その後、実際にブレイルノイエを試作すると、それを見た会社の人から「今度イベントのロゴとして使ってみない?」と声を掛けられる。
そのイベントは、2017年12月に神戸アイセンターで行われた、視覚障がい者と晴眼者の交流イベント「NO LOOK TOUR」。イベントのロゴをブレイルノイエで作成した高橋さんは、イベント当日、ロゴを読みながら視覚障がい者と晴眼者が談笑する姿が目に焼き付いた。
「視覚障がい者と晴眼者が同じ文字を読むことで、そこにコミュニケーションが生まれていたんです。だからロゴを作ったというより、”コミュニケーションの仕掛け”ができた感覚でした」
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