「7割超の起業家」に潜む「ドーパミン中毒」のリスク スタートアップの「成功」と「失敗」の狭間にある「罠」とは 「脳内物質」がもたらす「危険な関係」

なぜ起業家は「ドーパミン中毒」になるのか
近年ドーパミンが注目されている。ドーパミンとは脳内の神経伝達物質で、俗に「幸せホルモン」「快楽物質」などとも呼ばれ、報酬系や快楽に関係するとされる。
ドーパミンが問題となるのは、その流量と変動が極端すぎる場合だ。ドーパミンが欠乏すると、うつや無気力の症状が出る。過剰に分泌されると、躁病、妄想、依存などが引き起こされる。また、ドーパミンに対してどれほど敏感に反応するかには、個人差があるという。
ドーパミンを扱った書籍には、たとえば『ドーパミン中毒』(アンナ・レンブケ著、恩蔵絢子訳、新潮社、2022年)、『もっと!――愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』(ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング著、梅田智世訳、インターシフト、2020年)などの良書がある。
本書『起業中毒』は、そうした書籍とは切り口が少々異なる。本書は、ドーパミンを「起業」や「起業家」との関係で論じているのだ。
著者のニール・シーマン自身も起業家である。父親はドーパミン研究で有名な科学者、母親は精神科医という家庭で育った。著者は父親の死後にその論文や実験ノートを読み、父親の研究テーマだったドーパミンと、著者が起業家コミュニティで目にした起業家の特性・行動・考え方との間に関連性があるのではと考えて、研究するようになったという。
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