「7割超の起業家」に潜む「ドーパミン中毒」のリスク スタートアップの「成功」と「失敗」の狭間にある「罠」とは 「脳内物質」がもたらす「危険な関係」

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多くの起業家がドーパミンに対して敏感なのは、性質と環境の組み合わせによるものだと著者は考えるかもしれない。

彼らは敏感であるために起業に引きつけられるのかもしれないし、。そして、睡眠や家族との時間を削って長時間働き、厳しい競争にさらされる起業家の生活は、ドーパミンの調節に混乱をもたらす。

起業家は、向こう見ずなまでのリスクをとる可能性ことがあり、成功がもたらす「高揚感」に中毒になる可能性こともある。

起業家は「快楽主義型vs.価値志向型」か

また、著者によれば、起業家は快楽主義型と価値志向型に分類される。

前者は、てっとりばやく金もうけをしようとする人たちで、後者は「生きがい」、つまり好きなことや得意なこと、地域社会や世界に役立つことを動機とする人たちである。

前者は、金もうけ、権力、競争に勝つことが報酬となりドーパミンと結びついている。後者は、創造、社会に良い影響を与えることで得られる満足感でドーパミンと結びついている。

失敗に直面したとき、快楽主義型の起業家のほうが上手に対処でき、立ち直りも早いという。

価値志向型は、快楽主義型よりもドーパミンレベルの上下に敏感であるようだ。そのため、自責の念にさいなまれ、自己批判しがちになり、落ち込みや不安に陥りやすい。

とはいえ、起業家の大半は本来、価値志向型からスタートする。しかし、2008年頃から、世界的大不況が引き金となり、金融工学とデジタルテクノロジーの進歩によって、起業家の世界で利他的価値観が蝕まれるようになり、やがて快楽主義が幅を利かせるようになったという。

経済的・精神的プレッシャーがかかる起業家が、そのプレッシャーやストレスに対処する方法として、ニューロモデュレーション(電気・磁気・化学的刺激を神経系の一部に与えて、その活動を変えること)、信仰や祈り、ロゴセラピーなども取り入れてよいのではないか、と著者は述べる。

「……癒やしの技術――祈りや瞑想、その他の思索的実践――のプラセボ効果に注目することが、心理学者や精神科医が用いる認知医療法やその他戦略に取って代わるべきだと、またはそれらを排除すべきだと主張しているのではない。ただこのような介入にはこんにち的価値があると、わたしは考えている。……ほとんどの人にとって複数のものが必要になるだろう」
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