膵臓がん告知…30代起業家が半年後に涙した理由 「実存的苦痛」とは?どうやって乗り越えるか

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治すことが難しい進行がんと告知された30代の男性。彼はこの絶望をどう乗り越えたのでしょうか(写真:zon/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「生きる意味を見失ったとき」です。

私の外来(腫瘍精神科)に主治医からの紹介で、Aさん(38・男性)が受診されました。Aさんは進行した膵臓がんに罹患していることを1カ月前に告げられ、精神的に大変混乱されていました。

統計上でいうと、進行膵臓がんの5年生存率は数%。Aさんはがんであることを告げられるまで、自分の人生は当たり前のように続いていくと思っていたでしょうから、突然の知らせに混乱するのは無理のないことです。

晴天の霹靂だったがん告知

実際、診察室に入ってきたAさんは憔悴しきった様子でした。折り目正しいスラックスと、きれいなボタンダウンのシャツから、元来はおしゃれで社交的な方だったのだろうという印象を持ちましたが、表情は暗く、活気がありませんでした。

がんと告げられ、今どんなことで悩んでいるのかを尋ねると、Aさんは次のように心境を語られました。「がんがわかって、私の計画がすべて頓挫してしまったのです」。

「計画が頓挫?」

Aさんの話によると、8年前に会社を立ち上げ、大変な思いをしたこともあったものの、やっと事業が軌道に乗ってきたとのこと。海外の大企業との共同プロジェクトも決まり、今までの努力が実を結ぶところまできた矢先のがんの告知。5年後には会社は大きく発展し、自分の夢がかなっているはずだった……という未来が打ち砕かれたのです。

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