最近、診察室に来る患者さんが異口同音に唱えるのが「新型コロナへの不安」です。不安とは「不確実な脅威に直面した場合に惹起される感情」と定義され、がんも、コロナも「こうすれば大丈夫」という答えはありません。
子ども二人を育てる肺がん女性の不安
水戸部ゆう子さん(47歳、SNSユーザー名)も、大きな不安を抱えた患者さんでした。記事に役立ててほしいと、コロナ禍での不安を手紙に託してくれました。
水戸部さんは小学生と中学生の子どもがいる主婦で、進行した肺がんと診断を受けてから3年が経っています。幸いにも抗がん剤治療が功を奏して、病気の進行は抑えられており、進歩したがん治療の恩恵を受けていることを実感されていました。
ところが、コロナ禍になって「気持ちが落ち込む日も増えた」そうです。以前から「抗がん治療が効かなくなってがんが進行したらどうしよう」という不安をお持ちでしたが、コロナ禍はその不安をはるかに増幅させていたのです。
特に大きな影響を受けたのは、昨年春、がんの罹患経験がある女優が亡くなったニュースでした。
「自分のようながん患者がコロナに罹患したら、命取りになるのではないか」という懸念が頭の隅にいつもあり、また、「コロナに罹患したら抗がん剤治療を中断しなければならないのではないか、せっかく自分に合った治療法が見つかったのに、それができない間にがんはまた息を吹き返すのではないか」という心配も重なっていました。
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