がん告知された38歳が全力で仕事に挑んだ理由 会社員として、父親として抱えた葛藤

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38歳でがんと告知された花木裕介さんの現在とは?(写真:筆者撮影)
国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんと診断された約100万人中、15歳から64歳の就労世代は約26万人。全体の約3割だ。
だが、治療しながら働く人の声を聞く機会は少ない。仕事や生活上でどんな悩みがあるのか。子どもがいるがん経験者のコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ」の協力を得て取材した。
2017年11月、花木裕介さん(当時38)は中咽頭(鼻奥から食道までの中間部位)がんを告知された。医療関連サービス会社に勤める花木さんは、自社の「がん治療と仕事の両立支援サービス」の、セカンドオピニオン予約手配サービスなどを利用し、自宅に最も近いがん専門病院での治療を決めて9カ月間休職。
復職後は、両立支援サービスの利用経験を、実名でユーザー企業に講演して会社に貢献。一方で、がん経験者から見た望ましい寄り添い方を広めるために、一般社団法人がんチャレンジャーを設立した。
花木さんの社内外での果敢な行動力は、会社員や父親として抱えた葛藤をバネに生まれていた。

妻の「ごめんなさい」に救われた

「ごめんなさい」

花木さんが、中咽頭がんで、首のリンパ節への転移もあるステージ4だと伝えたとき、彼の妻はそう詫びてくれたという。

「子どもたちのことで精いっぱいで、あなたのことまで考えている余裕がなかった。ずっと空気みたいな存在だと思っていたから」

妻の言葉に心底救われたと、花木さんは約3年半前のことを振り返る。

当時4歳と7歳の息子の世話や家事の負担率は、ひいき目に見ても、共働きの妻7割で自分3割。週末は子どもの相手をするように努めてはいたが、彼はずっと妻への負い目を感じていたからだ。

「さらに休職して治療に専念すれば、収入が減って家計面でも妻に迷惑をかけることになる。それにもかかわらず、妻がまずそう言ってくれたことで、私の気持ちはとても軽くなり、病院探しも夫婦で冷静に話し合えました」

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