「行動を起こすことで気持ちが前向きになる」
「絶賛治療中です」
私と西口さんとの出会いは約2年前の、彼のこの一言が原点。ステージ4のがん当事者と会うのは初めてだった。私の「ステージ4の人」のイメージと、身長175㎝で体重73kgの坊主頭で、骨太な体格の西口さんとのギャップはかなり大きかった。
その落差を率直に伝えると彼はニヤリと笑って、「絶賛治療中です」と言い、私は失礼ながら笑ってしまった。「絶賛」とはこの上なく褒めること。だから「絶賛発売中」とは言っても、ステージ4の人自身が「絶賛治療中」とは普通言わないはずだからだ。私は想定外の表現に戸惑った。言い訳がましくて恐縮だが、その瞬間、自分の弱点さえも笑いに変えずにはいられない、同じ大阪生まれの血を感じた部分もある。
西口さんによる「ステージ4のがん」の説明は明快だった。
「がん医療が進歩した今、もう『ステージ4=末期がん』ではないんです。僕の場合、最初に胆管にできたがん以外に、別の部位に遠隔転移したがんもあり、切除手術ができない部分がある。これが『ステージ4』。ステージ3よりも4のほうが、がんが進行していて、厳しい状況なのは事実ですが、ステージ2や3の人より早く死ぬ、というわけではないんですよ」
抗がん剤が効いてがんが小さくなったり、どちらかのがんが消えたりすれば、手術で切除できることもある。また、西口さんが告知された「胆管がん」の胆管とは、肝臓で作られた胆汁(脂肪の消化を助ける消化液)が胆のうで濃縮されて蓄えられ、十二指腸へ分泌される際に通る器官のこと。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら