「死にゆく父親」と語り合った家族会議の中身 どんな最期を迎えたいかをとことん話した

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亡き夫、父と語り合った日々の思い出を話してくれたご遺族(筆者撮影)

「人生会議」という言葉が聞かれるようになった。看取り期における治療方針や、最期を過ごす場所などについて、元気なうちに医療者や家族間で話し合っておこうという政府のガイドラインだ。

だが、人生の終わり方について、家族で冷静に話し合うことなんて果たしてできるのだろうか。愛する家族にはできるだけ最後まで、本人らしく生き、苦しみ少なく過ごしてほしい。しかしそれを事前に話し合うことなど本当にできるのだろうか? 10年前に、最愛の夫であり尊敬できる父を看取ったという母娘に話を聞くことができた。

76歳のとき余命3カ月と告げられて

「76歳のとき末期がんで余命3カ月と宣告された父とは、最期を見据えて母と一人娘である私とでさまざまな話をしました。もともとフランクに何でも話し合う家族でしたので、最後のことも自然に冷静に話し合いができたのかもしれませんね。うちの会議がみなさんの役に立つかどうかは、ご家族によって異なるかと思いますが……」

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それでもよければお話ししますと、ある女性から丁寧なメールをいただき、神戸を訪れた。待ち合わせの老舗喫茶店に、はつらつとした笑顔が印象的な50代女性と、80代にはとても見えない彼女の母親がやってきた。

「父のことがきっかけで、私たちも終末期医療についての意志表示を、すでに書面にしているんですよ」と女性はすっきりとした笑顔で語り始めた。

家族構成(仮名)
父:秀雄さん(故人) 娘:綾子さん(58歳) 母: 満江さん(81歳)
家族の課題:余命宣告された父に、望むように最期を過ごしてほしい

中小企業の経営者であった秀雄さんに、最初にがんが見つかったのは、引退後の人生を満喫していた76歳のことだった。診断は胃がん。胃の全摘手術をすれば、回復する余地は十分にあるはずだった。しかし、秀雄さんは妻の満江さんに向かってこう言った。

「最期はホスピスで過ごしたいと思っている。早めに探しておくように」

「夫にしては珍しいほど、少し命令口調できっぱりと言ったんです」(満江さん)

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