2018年11月30日、厚生労働省は、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が事前に家族や医療関係者と話し合う取り組み、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の愛称を「人生会議」にすると発表した。
「どう死ぬか」「どう生きるか」を本人や家族を含めたみんなで考える。どんな最期を迎えたいかを本音で話し合い、医療関係者に伝えられるなら、それは一見いいことのように思える。
だが、実際には当事者の意思が無視された、“危ない人生会議”が多く行われているという。それは何なのか。在宅緩和ケア医として、神戸で訪問診療に従事する新城拓也氏に話を聞いた。
負のイメージを明るい言葉に置き換えているだけ
「当事者が自発的に、自分の生き方、死に方を考えて希望を伝えられるのならいいと思います。しかし、現在行われている多くの『ACP』も『人生会議』も、死が持つ負のイメージや家族の喪失といったネガティブな要素を、何か明るいポジティブな言葉に置き換えて名札を変えているだけ。それは危険だと感じています」
人生会議についてどのように捉えているかと質問をすると、開口いちばんに新城氏はそう答えた。
厚生労働省が発表した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」によると、ACPまたは人生会議は、主に末期がんなど治癒が望めない段階に入った患者の治療・ケアの方針を決め、意思を書面に残すために行われる。
この書面を「リビングウィル」や「事前指示書」などと呼ぶ。この書面作成のためにだけ行われるような「人生会議」が、あまりに急速に進められることに新城氏は懸念を抱いていると言う。
「治療の手当てがないということが明らかになると、そのまま病院(主には急性期病院)で入院し続けることはほぼできません。そうなると『患者支援センター』『相談支援チーム』などといった部門の看護師やソーシャルワーカーから、ある日突然、3択を迫られるんです」
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