長年の親友に「交際終了」を告げた女性の真意

78歳の女性が終活で示した「死に方は生き方」

玲子さんが親友に「交際終了」を告げた理由とは……(写真:筆者撮影)
人はいつか老いて病んで死ぬ。その当たり前のことを私たちは家庭の日常から切り離し、親の老いによる病気や死を、病院に長い間任せきりにしてきた。結果、死はいつの間にか「冷たくて怖いもの」になり、親が死ぬと、どう受け止めればいいのかがわからず、喪失感に長く苦しむ人もいる。
一方で悲しいけれど老いた親に触れ、抱きしめ、思い出を共有して「温かい死」を迎える家族もいる。それを支えるのが「看取り士」だ。
さまざまな「温かい死」の経緯を、看取り士の考え方と作法を軸にたどる連載の4回目。約3年前に、自分で書き留めた書面通りの最期を実現した78歳の女性の軌跡を紹介する。そして戦中生まれの彼女と夫に手つなぎ散歩を提案した、看取り士資格を持つ訪問看護師の思いとは――。

親友に書いた、交際終了を知らせる手紙

山岸玲子(仮名・享年78歳)が、親友の戸田昭恵(仮名)に、交際終了を知らせる手紙を書いたのは2017年8月4日。その11日後、玲子は自宅で意識を失って病院へ緊急搬送された。

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実は、同年7月に玲子は物忘れの多さに違和感を覚えて、同月末に脳神経外科を受診。悪性の脳腫瘍で半年から1年の余命告知を受けていた。

玲子は戸田への手紙で、長年の親交を丁重に感謝し、近年は体調がすぐれず、「粗相(そそう)や失礼があっては申し訳ないので、たいへん残念ですが、おつきあいはこれまでにさせてください」と書いている。

10年以上苦しんできた脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう:背骨の中を通る神経を背骨が圧迫して痛む)が悪化し、手術を受けたのが同年5月。だが術後、脳に悪性腫瘍が見つかったことが、玲子が手紙を出した理由の1つと思われる。

「そんな手紙をわざわざ出さなくても……」とか「それを受けとる親友の気持ちは考えたの?」と、違和感を持つ人もいるだろう。

しかし、その文面を代筆した長女の聖子(仮名・52歳)は、「長年親しくしてくれた人だからこそ迷惑をかけたくないし、気遣いもさせたくないという率直な思いであり、母らしいなと思います」と話す。すでに従来のような達筆では書けなくなっていた玲子は、聖子に代筆を頼んだ。

玲子は親友への手紙を投函後、20年近く通った小説教室も、仲間たちに「体の調子が悪くて休会することにした」と、代筆の手紙を送った。

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