親友に書いた、交際終了を知らせる手紙
山岸玲子(仮名・享年78歳)が、親友の戸田昭恵(仮名)に、交際終了を知らせる手紙を書いたのは2017年8月4日。その11日後、玲子は自宅で意識を失って病院へ緊急搬送された。
実は、同年7月に玲子は物忘れの多さに違和感を覚えて、同月末に脳神経外科を受診。悪性の脳腫瘍で半年から1年の余命告知を受けていた。
玲子は戸田への手紙で、長年の親交を丁重に感謝し、近年は体調がすぐれず、「粗相(そそう)や失礼があっては申し訳ないので、たいへん残念ですが、おつきあいはこれまでにさせてください」と書いている。
10年以上苦しんできた脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう:背骨の中を通る神経を背骨が圧迫して痛む)が悪化し、手術を受けたのが同年5月。だが術後、脳に悪性腫瘍が見つかったことが、玲子が手紙を出した理由の1つと思われる。
「そんな手紙をわざわざ出さなくても……」とか「それを受けとる親友の気持ちは考えたの?」と、違和感を持つ人もいるだろう。
しかし、その文面を代筆した長女の聖子(仮名・52歳)は、「長年親しくしてくれた人だからこそ迷惑をかけたくないし、気遣いもさせたくないという率直な思いであり、母らしいなと思います」と話す。すでに従来のような達筆では書けなくなっていた玲子は、聖子に代筆を頼んだ。
玲子は親友への手紙を投函後、20年近く通った小説教室も、仲間たちに「体の調子が悪くて休会することにした」と、代筆の手紙を送った。
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