がん告知された38歳が全力で仕事に挑んだ理由

会社員として、父親として抱えた葛藤

2017年末から2カ月間、抗がん剤治療をした(写真:花木さん提供)

花木さんは休職前から、病気と減収への葛藤を抱えていた。その後も、治療経緯を実名のブログで書き、できれば出版もしたいことも伝えて、妻の了解を得た。妻は治療に支障をきたさないことを条件に、「あなたのモチベーションになるのなら」と理解してくれた。

花木さんは、実名ブログで闘病について書くことが治療への意欲を高め、自分が生きた証しや、息子らへのメッセージにもなると考えていた。

「もしも、あの段階で自分の考えを妻に反対されていたら……と考えると、ゾッとしますね。心身ともに八方ふさがりで、かなりつらかったはずですから」

また、妻は自身の意見や感情は棚上げして、夫の考えを冷静に受け止め、その意思をできる限り尊重してくれた。自らも精神的につらかっただろう妻の包容力のある対応が、花木さんの試行錯誤を後ろ支えすることになる。

がん経験で会社に貢献するための業務提案

ステージ4のがんは、約9カ月間の治療と療養で画像上は消滅。復職した花木さんは、会社側に1つの提案をした。先の「治療と仕事の両立支援サービス」の利点を、自分が実名でユーザー企業にPRすることだ。

実は、彼は転職して1年半で発症した。そこに長期間の休職が重なると、職場での立場が難しいものになる。その危機感が休職中からあったという。

2018年3月から2カ月間行った放射線治療時に増設した胃ろう(写真:花木さん提供)

「病気のことは伏せて仕事をしていくのか。あるいは、自社の両立支援サービスの使い勝手のよさを、顔と実名をさらすことで、宣伝して会社に貢献するのか。自分の中で迷いはありませんでした」(花木さん)

ちなみに、花木さんが活用した両立支援サービスは主に4つ。セカンドオピニオン予約手配サービス。検査やセカンドオピニオン受診のための治療休暇(有給扱い)の取得。休職や復職などの申請手続き支援。そしてメンタルヘルス・カウンセリングだ。

花木さんは、傷病手当金(病気などで休職すると給料の約3分の2を目安に、最長1年半給付される)を、会社を通じて加入健康保険組合に申請していたが、その間の減収分は貯金で補っていた。

復職後、上司は「無理するな」と気遣ってくれて残業は減った。半面、残業代も休職前と比べて激減。復職後も、生活費が収入を上回る状態が続いた。会社側の配慮はありがたいと思いつつ、とはいえ生活もある。そこで彼は実名で講演するので減収分を補填してもらえないか、と会社に持ちかけた。

結局、花木さんの提案は前例がないことなどから、認めてもらえなかった。 だが、申請があれば兼業や副業についてはその都度検討する、という代替案を引き出した。後日、それを生かすチャンスが訪れる。

次ページ一方、花木さんの提案は…
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