病を抱える人の「コロナ不安」を鎮める3ステップ 気を紛らわせる、今に集中する、などが大事

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ではどうしたらいいかというと、比較的手軽に取り組める方法があります。認知行動療法という科学的に有効性が示されたカウンセリング法の1つで、「行動を変えることで、不安を小さくする」という方法です。

例えば、友達とおしゃべりしているときは気が紛れて不安にならないけれど、インターネットやワイドショーを見ていると不安が強まるという人は多いでしょう。

不安の程度は行動によって変化し、1日のなかでも高くなったり低くなったりしています。自分が不安になりやすい行動を減らし、そうではない行動を意識的に増やすことによって、過ごしやすくなるのです。

次も認知行動療法の1つなのですが、瞑想にルーツがあるマインドフルネスで、「今ここ」に心を集中させることも有効です。

将来のことを考えるから不安になり、過去のことを考えるから後悔や落ち込みにつながります。そうではなくて、今、目の前にある食事、自然の美しさ、仕事、大切な人に十分に注意を払い、向き合う姿勢を意識することも、不安な時代を生き抜くための知恵といえるでしょう。

がん患者の家族、友人に大切なことは…

家族、友人、職場関係者にがん患者さんがいて、何か力になりたいと思っている人も少なくないでしょう。そういうときに大切なのは、患者さんの気持ちを理解しようすることです。

私もコロナ禍が始まったころ、漠然と「がん患者さんにとってこの感染症は、大変な意味を持つだろう」ということは想像していましたが、冒頭の水戸部さんら多くの患者さんに話を聞いて、「ああ、それは本当に不安だな」と具体的に理解できたように思います。

そのうえで協力できることは何か考えるとよいのではないでしょうか。

私の場合は、来院が必要なければ電話診療をすすめていますが、同居家族や会う機会が多い友人に対しては感染予防を徹底する、リスクが高い場所に行かなくてもよいように代行してあげるなど、できることはあります。

私は以前、ある患者さんから、「毎日、病室の窓から見える場所に家族が来て、手を振ってくれる。とてもうれしい」という話を聞きました。もちろん、誰もがそのような行動ができるわけではありませんが、大切な人に対して、「気にかけている」というメッセージを伝えることは、大事なことです。

入院中に面会ができないことは、本人だけでなく、家族や友人にとってもつらいこと。こういうときこそ「あなたのことを想っています」というメッセージを伝えたらどうでしょうか。

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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