がん患者の心の理解を妨げる「一方的な配慮」とは

日ごろからの気持ちを言い合えるよう心がけて

大切な人が何を考えているか。想像するのではなく、言葉で確かめることはとても大事なことです(写真:Fast&Slow/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「医師から“手術はできない。病気と付き合っていくしかない”と言われたときの対処法」です。

先日、私の外来に、主治医からの紹介である夫妻が訪れました。夫の安田隆さん(仮名、59歳)はステージ4の肺がんで、現在、化学療法を受けています。紹介状には、ご本人が不安を抱いていることと、妻の裕子さん(仮名、51歳)が夫の精神状態を心配し、一度、話をしてほしいと希望されていることなどが書かれていました。

ご夫婦が診察室に入ってこられると、裕子さんは「あなたはこっちに座ったほうがいいんじゃない?」「荷物、こっちに置こうか?」などと、隆さんに対する気配りを欠かしません。私は2人にあいさつをしたあと、どんな経緯で今日ここに来られることになったのかを、隆さんに尋ねました。

いろいろと気遣う妻に病気の夫は…

「私はあまり気が進まなかったのだけど、妻がどうしてもと勧めるから、来てみました」と、おもむろに隆さんが口を開くと、裕子さんは間髪を入れず、「この人、最近あまり元気がないように見えるので、心配しています。好きな釣りにも行かなくなったし。なので、一度きちんと心のケアを受けたほうがよいと思ったんです」と補足されました。

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「なるほど、裕子さんが隆さんのことを心配されたので、今日の受診に至ったわけですね」と、私はこれまでのいきさつを確認したうえで、隆さんが肺がんになってから今に至るまでの心境の変化を尋ねてみました。すると、隆さんはこう語ってくれました。

「肺がんに罹患したことは青天の霹靂で、最初は大きなショックを受けました。あと少しで定年を迎え、これからは妻と穏やかな時間を過ごそうと思っていた矢先のことだったので。旅行や趣味のガーデニング、食べ歩きなど、描いていた退職後の楽しみはいろいろあり、その願いがかなわないのが残念でなりません」

そして、こんなことも話してくれました。

「恐怖や悲しみでいっぱいなときもありましたし、告知後はしばらく気持ちがふさぎ込んでいました。でも、抗がん剤治療が始まり、繰り返し治療を受けるなかで、病気との付き合い方のイメージが湧いてきたのです。その頃から、『起きてしまったことをこれ以上嘆いても仕方ないかな』と考えるようになったんです」

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