「不安に支配されそうな心」を取り戻す最初の1歩 自分の「考え方のクセ」を知ることから始めよう

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不安は私たちにとって必要な感情。一方で、支配されないことも大事。そのためにはどうしたらいいのでしょうか(写真:Graphs/PIXTA)
病気になる。しかも、それががんのような重い病気だったとしたら――。病気や治療に対する不安な気持ちや、うつうつとしたやりきれなさを抱える、そんながん患者に寄り添ってくれるのが、精神腫瘍医という存在です。
これまで4000人を超えるがん患者や家族と向き合ってきたがんと心の専門家が、“病気やがんと向き合う心の作り方”を教えます。今回のテーマは「がん患者から教わる、不安との向き合い方」です。

今回は、不安という感情との向き合い方について紹介します。

不安は必ずしも悪いものではありません。心が未来を向いたときに生じる感情で、不確実な脅威に対して「注意しなさい」というアラーム(警報)を私たちにくれます。不安というアラームがあまり鳴らない人は大胆な行動をとれますが、自分の身を不用意に危険にさらしてしまいます。

ただ、アラームが鳴りっぱなしになってしまうと、毎日の生活が立ち行かなくなるので、上手に向き合う必要があります。

がんで大きな不安を感じるのは当然

がんによってもたらされる苦痛には、4つの種類があります(「がんの終末期は苦しいのか」調査でわかった実態)。そのうちの1つが「精神的な苦痛」です。

がんに罹患するという大きなストレスに暴露されると、不安になったり、大きく落ち込んだりと、精神状態が変化します。がんの罹患で生命の脅威を感じて、大きな不安を感じるのは当然ですが、それに対処する心構えは、すべての不安に対して応用が利くものです。

私の外来に、上條真由美さん(仮名、37歳女性)がいらっしゃいました。 上條さんは乳がんを罹患し、手術で病巣を取り除いたあと、再発を予防するための化学療法が終了したところでした。上條さんの乳がんのタイプはホルモン療法などの追加治療は必要なかったので、積極的な治療は終了し、今後は3カ月に1回受診して、再発がないかチェックすることになっていました。

腫瘍精神科を受診した理由を尋ねると、上條さんはこう話されました。

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