心の専門家ががん患者に伝える5つのメッセージ 「病は気から」はがんには当てはまらない

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がん告知を境に毎日が一変してしまったと感じ、「心の苦悩」が大きいがん患者。数えきれない対話の中から、「がん患者のこころをささえる言葉」を紹介します(写真:Luce/PIXTA)
日本ではがん告知から間もない時期に、うつ病や適応障害などの精神疾患になる人は5人に1人にのぼるといわれています。また、がん患者は体の痛みより、死への不安や生き方など「心の苦悩」が大きいようです。
清水研氏の専門である精神腫瘍学(サイコオンコロジー)では、「がんは人生そのものが脅かされる体験」と表現されます。それまで平和であった何気ない毎日が、がん告知を境に一変してしまったと感じる方も多く、今までは自分事として考えてこなかった「死」が切実な問題として迫ってくることになるからです。
清水氏は20年間、4000人以上のがん患者やその家族と対話し、それぞれの苦悩と向き合ってきました。数えきれない対話から、「患者さんとの共同作業で生まれた言葉」として61編の言葉を選び、『がん患者のこころをささえる言葉』にまとめました。そのなかから10編の言葉を2回にわたって抜粋してお届けします。今回は前編です。

■苦しい感情にふたをしないで■

周囲の人の「頑張れ」と言う声は、
今のあなたには酷な言葉だろうと思います。

大事なのは、抱えている苦しい感情にふたをしないこと。
そして、泣ける場所や、
黙って泣かせてくれる人が必要だと思います。

茫然自失の状態で悲しむことができない時期、取り乱して泣き叫ぶ時期、理不尽な現実に怒りが込み上げる時期、失ったものに目を向けて涙が止まらない時期、現実を理解してしみじみ泣く時期など、さまざまな過程を経て、少しずつ現実と向き合えるようになっていくものです。

あなたは決して立ち止まっているのではなく、すでに現実と向き合うプロセスを進んでいるのです。泣いても、いいのです。十分すぎるほど、あなたは頑張っておられます。

無理に前向きにならなくてもいい

■「病は気から」は、がんには当てはまらない■

落ち込んだり、心配したりしても、
病気には影響がありませんから、安心してください。

私が専門とするサイコオンコロジー(がんとこころの医学)の領域では、「こころの状態ががんに影響を与えるのか?」を明らかにする研究が過去たくさん行われていました。

その結果、こころのあり方はがんの治療成績には影響しないことが明らかになり、最近はそのような研究はあまり目にしなくなりました。厳密な科学的な立場からは、ないと言い切るのに慎重にならざるをえず、「あったとしてもわずか」という表現を付け加える必要がありますが。

「病は気から」という言葉がありますが、がんには当てはまらないようです。「笑っていると免疫力が上がる」ということを聞いて不安になった方には、無理に前向きにならなくても大丈夫ですよと、私はいつもお伝えしています。

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