「不安に支配されそうな心」を取り戻す最初の1歩 自分の「考え方のクセ」を知ることから始めよう

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上條さんも「ぜひやってみたい」と前向きに答えられました。そして「もし再発したら自分はどうなってしまうんだろう」という心配について、どう考えたらよいか聞かれたので、私は次のように返事をしました。

「大丈夫、再発しても上條さんはやっていけます。そのことが起きていないうちは、悲観的な想像がたくさん働いて、自分はやっていけないのではないかと考えがちですが、いざその事態が生じると、心は定まるものです。起きた瞬間から、不安はなくなり、落胆に変わりますが、やがてまたその状況と向き合っていこうとするものです」

「上條さんは将来の再発を心配されていますが、がんになったこと、手術や化学療法といった治療を受けたことについては、今まで向き合ってこられたじゃないですか。だから、そうならないに越したことはありませんが、もし万が一再発したとしても、上條さんはやっていけると思います」

不安に支配されないコツ

次の外来の際、上條さんは記載した週間活動記録表を持ってこられました。以下はその一部を抜粋したものになります。本人の許可を得て紹介いたします。

週間活動記録表の例
上條さんが記した週間活動記録表。()内が不安の程度(上條さん提供)

「復職して、平日仕事をしている間は大丈夫なのですが、土日などにネットでがん体験者のブログを見ているときに怖くなることが多いと気づきました。また、何もしないと頭の中に悲観的な想像が浮かんできて、不安になってしまいます」

このように自分を客観的に分析した上條さん。自身の不安の傾向に気づいてからは、スポーツジムでヨガのクラスに参加したり、見たいと思っていた映画を見たりするようにするなどの工夫をして、不安に支配されないコツを身につけていきました。

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「何より、不安になることにすごく焦っていましたが、不安になってもいいんだ、そのうち過ぎ去っていくからと、自分に言い聞かせられたのがよかったと思います」

「この前がんになった友人と話して、ハッと気づいたことがあります。これからどうなるかわかりませんが、いずれにせよ自分の時間には限りがあるわけです。考えてもしょうがないことにこころを向けているのがもったいない。今日1日を精一杯生きるようにしたいと思っています」

上條さんの言葉には、力強さが戻っていました。

清水 研 精神科医、医学博士

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しみず けん / Ken Shimizu

がん研有明病院腫瘍精神科部長、精神科医、医学博士

1971年生まれ。金沢大学卒業後、内科研修、一般精神科研修を経て、2003年より国立がんセンター東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん医療に携わり、対話した患者・家族は4000人を超える。2020年より現職。日本総合病院精神医学会専門医・指導医。日本精神神経学会専門医・指導医。著書に「もしも一年後、この世にいないとしたら(文響社)」、「がんで不安なあなたに読んでほしい(ビジネス社)」など。

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