JR東海グループ「鉄板ナポリタン専門店」の挑戦 創業初の路面店をオープンさせた1人の社員

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開業するにあたり、やはり店の立地も重要である。が、コロナ禍とはいえ駅構内や駅周辺はテナント料が高く、利益が圧迫されるのは目に見えていた。

「JRの沿線ではないエリアの物件も見に行きましたし、どれだけ探したかわからないほどです。最終的には予算と広さの関係で今の、この場所に決めました。厨房機器やテーブル、椅子などは『トラッツィオーネ』で使っていたものを再利用することでコストを抑えました。そして、『トラッツィオーネ』から派生した店という意味を込めて『とらのこ亭』と名付けました」(内田さん)

挑戦はまだまだ続く

開業チャレンジ制度の選考は、2回にわたって行われる。1次審査は資料を使ってのプレゼンテーション。それをクリアすると、2次審査で収支計画について説明する。内田さんは自ら企画した鉄板ナポリタン専門店「とらのこ亭」に懸ける思いの丈を語った。そして、5月下旬に合格の通知を受けた。

喜びに耽る間もなく開業準備を進めて、今年2月にオープンさせた。看板メニューの鉄板ナポリタン「昔ながらのナポリタン」のほか、牛肉がたっぷりと入る「ゴロゴロミンチのボロネーゼ」や名古屋名物の「ナゴヤめしの定番あんかけスパ」も用意した。さらにグランドメニュー以外に日替わりのパスタも作り、内田さんは毎日SNSで発信している。

「ゴロゴロミンチのボロネーゼ」850円(写真:JFS)

また、夜は味噌味のホルモンとシャキシャキのモヤシを熱々の鉄板でいただく「てっちゃんもやしガーリック」などの鉄板料理を肴にお酒も楽しめる。

オープンから3カ月が経った今、店の経営状態はどうなのか。

「店の周辺は飲食店が少ないこともあって、近所に住む方や近くにある会社で働いている方がランチを食べに来てくれますが、夜の売り上げが今ひとつ伸びていません。『トラッツィオーネ』で出していたステーキやローストビーフなどを充実させようかと検討中です。正直、まだまだこれからですね」と、内田さん。その表情は決して暗くはない。自慢の鉄板ナポリタンで閉塞感の漂う飲食業界に光を照らし、ひいては名古屋の街を盛り上げてほしいと願うばかりである。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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