JR東海グループ「鉄板ナポリタン専門店」の挑戦 創業初の路面店をオープンさせた1人の社員

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その年の年末、中国・武漢で発生した未知のウィルスが瞬く間に全世界へ広がった。飲食店にとって稼ぎ時である忘新年会はかろうじて乗りきったものの、新型コロナと呼ばれるウイルスに人々は恐れおののき、メディアで感染者数が報じられるごとに客足は減っていった。大きな売り上げが見込める歓送迎会は軒並み中止、旅行や花見なども自粛することに。

4月になり、緊急事態宣言が全国で発出されると、街から完全に人が消えた。本来であれば、旅行客で賑わうGWの名古屋駅も閑散としていた。JFSが運営するすべての店舗は休業となり、現場で働く内田さんたちは自宅待機を命じられた。

自宅待機中に考えた売り上げアップの方策

「何しろ、名古屋駅の桜通口から太閤通口までの中央コンコースに人っ子一人いないんです。さすがにこの先どうなるんだろうと思いましたね。もうこれまでの常識でやっていてはダメなんだと実感しました。ただ、時間だけはあったので、今後どのようにすれば売り上げを伸ばすことができるのかを考えていました」(内田さん)

一般的に飲食業は食材の原価と人件費などの経費を合わせて60〜65%に抑えるのが理想とされる。「トラッツィオーネ」をセルフスタイルのカフェにしたのも人件費を抑えるためでもあったが、90席もある大型店だったうえ、店内の視認性に欠けていたこともあり、スタッフを揃えなければならなかった。逆にカウンターだけの小さな店であれば、ワンオペでも店を回すことができるのではないかと思うようになった。

「とらのこ亭」の店内。最小限のスタッフで店を回せるようにカウンター席がメイン(筆者撮影)

さらに、駅構内という立地についても深く考えた。駅構内の店の来客数は駅の利用者数に比例する。それが何よりの強みだったが、新型コロナの感染拡大によって、これからは駅構内という立地に頼ることはできないことを痛感した。

「外食の需要は減ったわけではないんです。実際、郊外にあるファストフード店や焼肉チェーンは賑わっていましたから。ただ、駅など人が集まる場所には行きたくない、と。それならば、駅以外の場所での店舗展開も視野に入れて考えなければならないと思いました」(内田さん)

次ページなかなか客足は戻らず…
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