ロシアが突如ウクライナに侵攻を開始して1カ月。ウクライナ側の予想以上の抵抗を受け、戦争は長期化の様相だ。
ところで渦中のウクライナでは、新型コロナはどうなっているのか――連日の報道の中で、医師として気になるのはその点だ。
テレビで現地の様子が映し出されても、マスクをしている人のほうが少ないくらいだ。だが、彼らにはもともと着ける習慣がない。この状況では、なおさらマスクどころではないのだろう。かといって、ロシアの侵攻でウイルスが退散するわけもない。
ウクライナの新型コロナ事情を少しだけ調べてみた。
更新が止まった新型コロナ感染者数
と言いながら、結論から言えば、これが実際さっぱりわからない。
これまで感染者数を公表してきた「ウクライナ国家安全保障防衛評議会」のサイトは、ロシアによる侵攻が始まった2月24日から、アクセスできなくなっている。その時点では、1日あたりの感染者は2万7000人超だった。
ジョンズホプキンス大学のデータベースによれば、侵攻直前のウクライナは新型コロナ第4波の中にあったものの、1日あたり感染者数は2月11日の約4万2000人をピークに減少傾向ではあった。
だが、3月初旬のウクライナの気候は最高気温が5℃前後、最低気温が氷点下で、まだ東京の真冬以上の厳しさだった。インフラ施設や医療機関も攻撃を受け、自宅にとどまっている人も避難した人も、体調管理が難しい状況にある人は少なくないだろう。
「そうは言っても、今はワクチンがある。治療薬もできてきた」という指摘があるかもしれない。
だが、同データベースによれば、ウクライナの接種率は2月24日時点で全人口の約35%。追加接種を受けたのはわずか1.7%だ。これまでに504万人が感染しており、これは全人口の約11%にあたる。
少なくとも過半数のウクライナ国民はワクチン未接種かつ未感染で、新型コロナへの免疫がないと推察される。
医療は逼迫している。
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