多様化するセカンドキャリア、継続雇用、定年延長…先進企業に学ぶ人事制度
【富士電機ホールディングス 65歳まで定年延長】
定年延長に満足せず 制度の「使い勝手」を改善
2000年に選択制の定年延長制度を導入した富士電機ホールディングス(富士電機)。ただ、対象者の選択率は、制度導入初年度こそ約15%あったが、2年目以降は5%前後と利用が進まなかった。
延長選択の時期が55歳時と早かったうえに、延長時の定年は65歳のみ。給与水準は56歳から59歳までが15%減額、60歳以降は4~5割減となる設計だった。「早期導入を優先したため、使い勝手がよくなかった」(矢座正昭人事勤労部長)。
高齢者活用に“本気”の富士電機は、早々に制度見直しに着手。退職者も含む従業員、管理職へのアンケートで不満や要望を吸い上げた。
不満は「選択時期が早すぎる」「いったん選択すると見直せない」「延長期間が5年間のみ」「処遇と貢献が連動しない」「定年延長を選ぶと56歳から賃金が減額される」という5点に集約された。一方、50~54歳の約6割が60歳以降の就労を希望していることも判明した。
06年に制度を改定。55歳時に制度の詳細を説明し、選択時期は57歳に遅らせた。さらに59歳時に最終の意思確認を行う、退職年齢は60歳から65歳まで1歳刻みで選べる、という丁寧な制度にした。
賃金カーブにもメスを入れた。全従業員に対し、年功で自動的に給与が上がる制度を廃止したうえで、延長選択者の56歳から59歳までの給与減額を廃止。60歳以降の4割減額は変わらないものの、貢献度を査定し増減させるように改めた。そうした結果、06年以降の延長選択率は4割超へと飛躍的に向上している。