多様化するセカンドキャリア、継続雇用、定年延長…先進企業に学ぶ人事制度
【イオンリテール 65歳定年制】
60歳での昇格は当たり前 企業年金含めた一体改革
月間入場者数が100万人に達するイオン土浦ショッピングセンター(SC)。同SCの運営責任者を務めるのは、今年1月に60歳を迎えた井上和行SCモールマネージャーだ。ジャスコで35年を超すキャリアを持つが、モールマネージャーは初の就任。65歳定年制を導入しているイオンでは、60歳でもキャリアアップし活躍する人材が増えている。
イオンの中核会社、イオンリテールが定年を60歳から65歳へ引き上げたのは2007年2月。「年を重ねることでお客様に奉仕できる範囲が広がる。また人とのコミュニケーション能力も上がっていく」(山本博之グループ人事部長)。店舗を拡大し成長する戦略を描いてきた中で、経験豊富な60歳以上の人材を保持したいという思いは根強かった。
02年8月に勤務年数による年功的な昇給制を廃止し、勤務コースと社内資格試験を軸とした給与体系に変更。さらに06年には60歳以上の再雇用も開始するなど、段階的に準備を進めてきたことで、65歳への定年延長は混乱なく導入できたという。
60歳を超えてもそれまでのキャリアを継続することができ、昇格もあれば昇給もある。モールマネージャーや店長といった体力を必要とする職務から、事業部長など戦略構築を取り仕切る役職まで、その活躍の場も多岐にわたっている。
一方でイオンは10年4月、企業年金の受給開始も65歳へ引き上げた。賃金から年金までのセットの改革が、65歳定年制の下地にある。