多様化するセカンドキャリア、継続雇用、定年延長…先進企業に学ぶ人事制度
50歳代後半のモチベーションが向上
導入から3年経ち、山本人事部長が感じたのは「社員の働く意欲が50代後半に一層高まっている」点だ。50代後半になると、60歳以降の社外活動をイメージし、仕事熱が冷める人が多く見られた。だが今は「若手よりもパワフルだ」(同部長)。
「体力や忍耐力の低下は60歳定年が敷かれていることによる自己暗示にすぎない」。そう力説する先の井上マネージャーは1日2時間の勉強を1年間続け、合格率が2~3割というSC経営士の資格を取得した。
60歳以降のキャリア形成を見据えた人事異動も積極的に行われるようになった。井上マネージャーも50代後半に差しかかった06年から3年間、盛岡に発寒、石巻と日本各地のSCへ異動を繰り返し、モールマネージャー就任への準備を重ねた。
もちろん課題がないわけではない。老練な社員が増えた一方で、中堅社員のモチベーションをいかに維持するかという点だ。特にリーマンショック以降、イオンは国内出店にブレーキをかけており、65歳定年制導入時の思惑とズレが生じている。実際、中堅社員がポストに就けない事例も起きているという。
現状では業績が堅調な食品スーパーやサービス事業など、グループ企業で創出されるポストに若手を抜擢し、モチベーションの向上を図っている。「多くのグループ企業を抱えているから、制度を維持できている面もある」(山本部長)。65歳定年制の定着へ模索は続いている。