働かないオジサンを生む「不安」とは?

「サラリーマンとしての自分」の見つめ直し方

今でも記憶にあるのは、いつもいすに座ってたばこばかり吸っていた貸本屋のオジサンだ。

「東京オリンピックで、アメリカのボブ・ヘイズ選手が、人類で初めて100メートルを10秒を切って走りそうやで」と小学生の私が意気込んで言うと、「人間が、100メートルを1秒速く走ると、それでなんかなるのんか?」と難しい宿題を出してくれる。

店の前に座って、道行く人の姿を眺めてばかりいたクリーニング屋のオジサンもいた。毎日、同じ場所に座っているので、子ども心にもなぜ働かないのだろうと不思議に思った記憶がある。おそらく、「利益が大事」だとか、「売り上げを対前年比でアップする」などと言っていた商店主はいなくて、いい気持ちで長く商売ができればいいと考えていたからだろう。

本当に働いていないオジサン

また、歓楽地では、おカネが街を回っているので、まったく働かないですむ人も多かった。

私の実家の前にある喫茶店で、「車検のとき、タイヤに傷さえつけておけば、後でうまくごねて、車検代はタダになるのや」など、詐欺まがいのことばっかり言っているが、近所の恵まれない家庭にすごく肩入れしているオジサン。

私が大学の法学部に入学すると、「すぐに弁護士になったらあかんでぇ。まず、検事になるんや、検事に。検事を経験して顔を売ってから弁護士にならんとあかんでぇ」といつも繰り返す元親分。いつも街でぶらぶらしていて、子どもたちによく映画券や演芸場の入場券をくれた遊び人の兄ちゃんもいた。

わかりやすく言えば、「寅さん」を関西弁にして、顔にお好み焼きソースを塗ったかのような雰囲気の人が多くいた。

だから会社に入社したときには、私は「なぜ、皆がこんなに一生懸命働くのだろう」と不思議でならなかった。

ただ、当時の商店街の働かないオジサンと、サラリーマンの働かないオジサンには大きな違いがある。それは顔つきである。同じ働かないオジサンでも、サラリーマンに比べて、当時の商店街のオジサンのほうが、圧倒的に「いい顔」をしていた。これは間違いない。収入や財産は少なくて、生活も安定していなかったのにだ。

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