角田:少なくとも自分が考えるよりは広い情報をくれるよね。
加藤:そういう意味で、OB・OGだけでなく、親兄弟・親戚とか、ないしはゼミの先輩とかを含めた先達に対して、いわゆる「就活に必要な質問」とは別に、自分の知りたいことをアクティブに訊くといいんじゃないでしょうか。
もう1つ別の考え方もあって、同じ会社内の中でも思いがけない可能性があるかもしれない。ある人が「わざと大きな会社に行った」って言うんだよ。「なんでですか?」って聞いたら「社内に職種がいっぱいあるからだ」って。
角田:ああ、選べるわけだね。
加藤:例えば最初は「営業やりたい」と思って入ったのに他の職種が面白くなっちゃった時、職種が少ない会社だと、動けない。でも大きい会社だと、異動の可能性と自由があるよね。という話。加えて、会社によっては「〇〇申告制度」みたいなものがあって、実は「社内転職」の可能性が開けている。だから大きい会社がいいんだ、とその方はおっしゃる。そういう考え方も確かにありますね。
角田:それはあるよね。例えば僕が昔働いていたTBSテレビだと、テレビ以外のこともいろいろやれる。ACTシアターで演劇をやってるような人もいるし。
加藤:OB・OG訪問の時にありがちなのは、目の前にいて話を聞いている人のことばかり訊いちゃうことだよね。それはもちろん訊かないと失礼だというのもあるけれど、配慮しつつ、「他に何ができるんですか?」という辺りを訊いてみるといいのかもしれない。
角田:僕がいつも言ってるんだけど、8割ぐらいの人はいい人だからね。 2割ぐらいの悪い人は「めんどくせえよ」とか思うかもしれないけど、8割ぐらいの人はちゃんと聞いてくれるし、答えてくれる。
加藤:そりゃあそうだね。大人になると、自分の会社のことがある程度わかってるのに加えて、競合他社の話も大体わかるじゃないですか。だから、そういうのを含めてもっと「広く訊く」ことに時間を上手く使えるといいかなと思います。
「まずは3年続けてみろ」には意味がある
角田:全然違う角度から言うと、質問で「やりたいことがわからなくなってしまいました」って言ってるけれど、さっきも話した通り、やりたいことなんかどうせわかってないじゃないですか。だから、ギャンブルとして、もうインスピレーションで決めちゃうって方法もあると思うんですよ。
友人に、日本の織物研究の権威になっている女性がいるんです。それで、「あいつ、大学時代に織物の研究なんてしてたっけな?」って思ったら、やっぱり全然してなかったんだ。でも、たまたま最初に博物館に学芸員として就職して、そこで「織物担当をやって」って言われちゃったんだって。はじめは「えー」って言って織物担当になったんだけど、それで20年ぐらい経ったら、結果として日本の織物研究の権威になっちゃったわけ。