前回の記事(「できていた事ができなくなった」自分を許せるか)では、自己肯定感が低い人の潜在意識には、「自分はこうあらねばならない(=must)」という強い考えがあるということを説明しました。物心がついたころは、純粋無垢な「こうしたい(=want)」の自分しかいませんが、成長するにしたがって周囲とのかかわりのなかで、mustの自分ができあがっていきます。
主治医の勧めで外来を受診した乳がん患者の吉田恵理さん(仮名、52歳)の場合は、「家事をきちんとこなす主婦でなければならない」というmustがありました。がんやがん治療の影響で体力が低下し、そのmustを満たすことができない自分はダメだと、自己否定してしまう状況になっていたのです。
初診から2週間後のこの日は、吉田さんの受診日でした。
「こんな自分じゃだめだ」と落ち込む
相変わらず「こんな自分じゃだめだ」と思ってしまい、落ち込んでいるとのこと。ご自身が完璧主義の傾向があることを頭では理解しているようで、「“そこまで完璧を求めなくてもいいじゃない”と思うのですが、つい“それじゃだめだ”という思いが勝ってしまうんです」と言います。
そこで、私は1つ質問をしてみました。
「子育ての経験がある吉田さんなら実感されているでしょうが、物心がついてまもなくの子どもは、完璧主義ではないですよね。吉田さんも、小さいころはのびのびと自分の欲求や感情のままに生きていたと思うのです。そうすると、今のように完璧主義になったポイントがあったと思うのですが、いつからそのような“きちんとしなきゃ”という考え方が芽生えたんですか」
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