世界一安くて「我慢しない」永遠のダイエット法 「食べたいが太りたくない」ジレンマからの脱出

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そうだよ。私の「食べること」への感覚が変わってきたのは明らかに、会社を辞めてそういう食生活を始めてからのことだ。一膳の玄米飯と味噌汁、漬物を食べ終えた時点で、何の迷いもなく「ああ美味しかった」「ごちそうさま」と、心の底から手を合わせて食事を終えることができるなんて、それ以前には決してなかったことだ。

一体なぜそんな奇跡のようなことができるのかというとですね、別に私の精神が高みに達したからとかそういうことではなく、何しろこの献立だと「もうちょっと食べたい」と思ったところで、ご飯をお代わりしたり、ぬか漬けを新たに切ったりする程度のことなのである。

つまりはおなじみの味には変わりないわけで、お腹がふくれるだけで、心がふくれるわけじゃない。面白くも何ともないんである。となると「これ以上食べても苦しいだけ」ということになり、まったく食指が動かない。

なんの我慢も無理もなく「腹八分目」が常態化

そう、欲がおとなしくしていると、私ごときの凡人であれ、自然に体の声が聞こえてくるのだ。食べすぎないほうがおなかも頭も軽くてクリアで快適ということが否応なくわかってくる。かくして人生で初めて、なんの我慢も無理もなく「腹八分目」が常態化するという、現代におけるザ・ミラクルを現実のものにしたのである。

毎日違う「ごちそう」を食卓に並べていた時は、まったくそうはいかなかった。酢豚とか焼きソバとかパスタとかキムチ炒めとか南蛮漬けとか肉じゃがとか日々違うものを食べていたら、いつどの時点で自分は「満腹」なのか、さっぱりわからなかった。

今にして思えば、それは私の意志が弱かったとか欲が深かったとかそういうことじゃなかったのだ。食べているものが毎日違うんだから、比較対象がないので判断できないのは当たり前だったんである。

当時の私は明らかに、「満腹かどうか」より「美味しいかどうか」に圧倒的に心を奪われていて、「美味しい」となったら、やっぱり、どうしたって、どこまで食べたって、あと一口、食べたかった。なので結局は毎回、ぐっと我慢をして泣く泣く食べるのをやめることで、ようやく食事を終えることができたのである。

というわけで、冷蔵庫や広い台所を諦めざるをえなくなって始めた「貧しい食生活」により、私は永遠のマッチポンプ、現代における最も恐ろしい魔のサイクルから永久に抜け出すことにまんまと成功したのであります。

いやはや何度でも言いますが、まさかこんな結末が待っているとはまったく考えていなかったのである。わたしゃ「金の斧、銀の斧」の昔話を思い出したね。欲を捨てた者には、神様がちゃんとどでかいプレゼントを下さるというのは、子供の教育のためのオタメゴカシでもなんでもなく、まごう事なき現実だったのだ!

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