近所のカフェが「わが書斎」
前回、高級マンションから収納ゼロの老朽ワンルームへの引越しで、何もかも手放さねばならぬという人生初の非常事態にしょんぼりしていた時、私と本の趣味がぴったり合う近所のラブリーな古本屋に遭遇し、そうだよこのお店をわが家の本棚と考えたらいいじゃないの……という画期的なアイデアを思いついた経緯を綴らせていただいた。
この発想の転換は、生まれてこのかた半世紀にわたり、モノにこだわりモノを集めモノに執着し続けていた私にとって、革命ともいうべきショッキングな出来事であった。ショックのあまりわが頭は大混乱し、そのうち堰を切ったように、さまざまなアイデアがあふれ出てきたのだ。
例えば、服である。本と同様、街の古着屋さんを自分のクローゼットと考えたら良いのではないか? 必要な時に買い、着なくなったら売る。よく考えたら派手な服や流行の服なんて、案外数回しか着ないままに、次に着る予定もなく延々と家の中に抱え込んでいたりするものだ。まことにもったいなく、意味のないことである。
で、他の人だって案外似たようなことをしているのではなかろうか。だとすれば、古着屋さんを、そんなわれらの共同のクローゼットと思って活用すれば皆が助かるに違いないのである。
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