「壊れてもいい」甲子園投手にどう反論できるか

甲子園を過度に美化する高校野球の大問題

「高校を出たら野球をやめる」という選手には何と言えばいいでしょうか(写真:筆者撮影)

今年の2月、ウェビナーで野球指導者に話す機会があったが、ある高校野球の指導者からこんな問いかけがあった。

「ほとんどの生徒・保護者は甲子園で一段落と考えていると感じています。そんな思いで投げたがる選手をどう納得させたらいいでしょうか。高校で野球は終わりじゃない、と伝える秘策などありましたら、聞かせていただきたいです」

「球数制限」の議論で、必ず出てくるのが「ほとんどの選手は高校を卒業したら、野球をやめるんだから、肩ひじが壊れても投げさせてやるべきだ。高校で燃え尽きさせるべきだ」という意見だ。これは実に強力だ。筆者はこの問題について考えてきたが、なかなか反論できないし、納得させることもできない。

過度な球数を投げると高まるリスク

筆者はまず、この問いかけを私にくれた県立高校野球部の監督に話を聞いた。

「私は一時期、少年野球の指導をしていましたが、少年野球では、ほとんどの保護者が『野球は高校まで』と言います。『大学、社会人までやってほしい』とはまず聞いたことがありません。自分が野球をやってきた父親にとっては、プロになる確率より甲子園のほうが身近で手が届く。そこに行ければ、野球をやめて次、みたいな感じだと思うんです。

私としては、高校で、生徒が仮に壊れてもいいから投げたい、と言ってきたら『それは違うよ、ここから先にも面白い野球、可能性があるから君を潰すわけにはいかない』と伝えたいと思います。ただ選手や保護者の思いも知っているから、正直、ほんとにスパッと言えるかな、と不安にもなります」

投手が1試合で過度な球数を投げたり、間隔を置かずに投げたりすると、肩やひじを損傷するリスクが高まる。中学生以下の場合はOCD(離断性骨軟骨炎)や上腕骨内側上顆障害など「野球ひじ」と言われる障害、高校生以上では、ひじのじん帯損傷、断裂や胸郭出口症候群などを発症する可能性が高まる。

手術や温存療法などで治療することになるが、完治するとは限らず、障害が残る可能性がある。また日常生活に支障はなくても、治療後に競技のパフォーマンスが低下することも多い。「球数制限」は、こうした高校以下の投手の故障、生涯のリスクを軽減するために設けられた。

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