「使いにくい」と思い始めた70代
東京・文京区にある、築54年のマンション。ここに暮らすエッセイストの髙森寛子さん(88歳)が、奥行3メートル少々、縦長のちいさな台所をフルリフォームしたのは、82歳のときだった。
婦人雑誌の編集者を経て、ふだん使いの漆器を中心にした日本の生活道具のギャラリー「スペースたかもり」を主宰する髙森さん。仕事柄、伝統的な生活道具にこだわり、いろんなものを使ってみるようになって40数年あまり。
かなりの数の食器や生活道具は、46年前にマンションを購入したとき、造作で新設したものを含め、3台の食器棚と吊り戸棚に押し込んでいた。
「今のように“いらないものは捨てましょう”という時代ではなく、あるものすべてを収納するリフォームが流行っていたように思います」(髙森さん)
お見事! と言いたいくらいの収納力を誇る昭和の台所が、「なんだか使いにくいなあ」とぼんやり感じるようになったのは、70代の半ば頃だったという。


















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