ここで、ちょっと不思議な感情が湧いてくる。私は、自分の情報が中国政府に筒抜けになったところでかまわないと思っている。音楽活動以外、政治に関することもやっていなければ、後ろめたいこともやっていない。だから自分に関する情報を政府が閲覧したところで、どうでもいいとさえ思っている。
でも、これを日本でやられるといやなのだ。例えば、日本のホテルでチェックインするときに住所を書かされる。これもいやだ。かつて「なんであんたに住所教えないかんの?」といってスタッフを困らせたことさえある。たいていの場合「規則ですから」の一点張りで、住所を書かせる理由を説明できるホテルスタッフはいない。「個人情報保護法」とやらの関連法律があるのだから、書かせた住所の使い途を提示して誓約書にサインしろ、ぐらいまで思ってしまう。
なぜか。それは、自由で民主的と言われている日本でそんなことをされるから腹が立つのだ。だが、中国で同じことをされてもまったく腹が立たない。「中国はそんな国やから、しゃーないなー」ぐらいしか思わないのだ。
再び銀川で個人情報を言わされる
北京で数日を過ごし、また銀川市に行くことになった。ここで、自主隔離のときの話が関連してくる問題が起きる。北京でビザ更新の手続きを終え、審査期間中になるとパスポートを当局に提出する代わりに「受取証」のような書類をくれる。これがパスポートと同じ効力を発揮する。
北京の空港では「行程卡」「Health Kit」アプリを使って空港に入り、チェックインではパスポート代わりの書類を提示して無事出発。ところが、銀川の空港に着くと、誰も飛行機から降りない。私ともう1組の中国人カップルが先に降ろされ、バスに乗せられて空港の別室に案内された。そこには「境外回寧人員登記所」、つまり「境外から寧夏(回族自治区)に帰った人が登記する場所」と書いてある。
ここでは防護服を着た担当者が、私にいろんな質問をしてきた。おおよそ、入国時期や隔離場所に関する情報で、もうすでにすらすらと模範解答が頭に浮かぶほどだ。だから、「情報はちゃんと共有しておけよ」と思わず毒づいた。
担当者の事情は、おそらくこんな感じではなかったのだろうか。私はパスポートを持っていないので中国への入国日がわからない。パスポート代わりの書類にはバーコードがあるものの、空港のチェックインカウンターではそれがスキャンできない。北京の空港側は「入国日がわからない外国人を乗せたから」と連絡があった。それを聞いた銀川市の当局は、「そういえば、自主隔離で銀川に来ると言っていた外国人がいたなあ」というわけで、こんな別室に案内されたのではないか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら