銀川市では私がプロデュースしているバンドのメンバーたちが空港まで迎えに来てくれて、彼らが用意してくれた「自主隔離先」となる部屋まで案内してくれた。私は北京にも家があるが、同居人がいると彼らまで隔離生活を送らなければならなくなるため、1人での隔離生活を希望した。
この自主隔離先では、「最初の1週間はこの住居がある社区長(町内会の会長)のような人が監督し一歩も部屋から出ずに生活する。その後の1週間は社区長が判断して、人混みとなるような場所でなければ外出してもよい」と聞かされていた。ところが、この社区長からは2週間、まったく連絡が来なかった。この社区長の話は、後に続く。
結局、連絡が来なかったので自主判断で隔離最終日に病院に行き、PCR検査を受けた。もし北京に帰ってから陰性証明書の提示を求められたとき、何か問題が生じたら困るためだ。その後北京に戻ったが、ここでは自分の労働ビザの更新手続きが待ち構えていた。ビザの更新のためには「住宿証明」を取得することと、病院での健康診断が必要となる。この健康診断までにもう一騒動が起きる。
携帯アプリですべて手続きが済むのだが…
デジタル化が進む中国、病院での受診予約もアプリで行うのだが、選択肢が多岐にわたって迷うことが多く、しかも外国人向けの予約フォーマットがなかったりしてスマホを手にして試行錯誤してしまう。ようやく予約し病院に向かうと、今度は健康診断を断られるというアクシデントが生じてしまった。中国入国時点から計算した時間と、規則で決められている時間の計算方法が、私と病院側の認識で差が生じてしまったためだ。
到着する飛行機の時間といった細々としたことまで書かせて提出させ、記録として残しているはずなのに、実際のアプリではそんな計算ができていない。ということは、国家がつくったアプリであるにもかかわらず、出入国情報や隔離情報といった情報がひも付けされていないのだ。
中国のITと個人情報管理が、たとえSF映画のように完璧に管理されていたとしても、それを閲覧する権利を持つ者と持たない者がいると、当然、持たない者からは見えない情報が存在する。そこに問題が生じる余地ができてしまうということだ。
そんな状況が、私をさらに振り回すことになる。ビザ更新に必要な「住宿証明」でも、ITによる情報管理ゆえにトラブルが起きた。証明そのものはたいしたことがない。マンションの大家と会い、そのマンションの管理会社に言って手書きで「うちのマンションにこの人は確かに住んでいますよ」と書いてもらうだけ。この書類を最寄りの警察署に提出して「住宿証明」を取得するのだが、今度はこの警察署に入れなかった! 警察署に入るために必要な、健康状態に関する証明ができなかったためである。
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