実は抜け穴だらけ?「監視社会」中国の実態

ITを駆使して個人情報を収集しても管理は適当?

今、私は仕事で寧夏回族自治区の銀川市に来ている。銀川市は同自治区の首府とはいえ、田舎町だ。それでも、至る所に監視カメラがある。日本で言えば、電柱ごとにすべて監視カメラが設置されているような状態だ。

これほど設置すれば経済的な負担は大きい。さらに、監視カメラの映像をすべてチェックして違反者を特定し罰金を徴収するためにかかる人件費だけでも莫大な費用がかかっているはずだ。とはいえ、「多くの人民から片っ端に罰金を取れば、あっという間にペイするよ」という噂がある。

しかも、デジタル・IT大国となった今の中国では当然、そのようなシステムもすべてデジタル化されている。例えば駐車違反をすると、車のナンバーにひも付けされている電話番号にSMSメッセージが来る。携帯電話にアプリを入れておくと、そのアプリに違反を示す証拠写真も送られ、罰金もそのアプリの中にあるデジタルマネーでの支払い機能で支払うことができる。

違反、即罰金のシステムに不満なし

これほど簡単に徴収されるがゆえに、私が誰かの車の助手席に座るときには「シートベルトをしてくれ」と言われる。昔は誰もしていなかったのに……。ちなみに、飲酒運転で捕まれば即、刑務所行きだ。おかげで、飲酒運転やその他交通違反は劇的に減った。そうしなければいけないから、といった人民の不満は、少なくとも私の周囲では皆無だ。要は、違反しなければいい、交通事故は減るし、別に悪いことはない。「こんなシステムはクソだ!」とお上にたてつく人はいない。いたとしても、「国家安全法」でパクられておしまい、だ。

こんな国で暮らして、30年になる。在住外国人は人民が持つIDに当たるものがパスポートになる。私は新型コロナウイルス感染症が拡大する直前に出国して、1年以上中国に入国できていなかったが、いない間に生活上のデジタル化がさらに進んだ。外国人を含むすべての中国居住者は「行程卡」というアプリを携帯電話に入れておかないと、中国国内の通行ができない。

これが日本であれば、「高齢者とか、スマホが使えない人たちはどうするんだ?」との意見が出てきそうだが、中国はそんなことは考えない。故・鄧小平さんが「豊かになれる者から豊かになれ! 黒かろうが白かろうが、ネズミを捕る猫がいい猫なのだ!」と言った通りにこの国が進んでいるためだ。

私の経験を紹介しよう。外国から上海空港に着き、空港近くのホテルでそのまま2週間の隔離生活を強いられた。隔離期間が終わると、アプリ「行程卡」が緑色になる。これはどこでも通行できるサインなので、自主隔離場所に選んだ銀川市へ向かった。どこの自主隔離先に向かうか、飛行機の便名まで書き入れる書類が回ってくる。私は隔離終了証明書や新型コロナウイルスに対する陰性証明書も携帯していた。おそらく、このような情報はお上のデータベースに入っているだろうが、もしものための用心だ。

その「もしも」が、まさか実際にやってくるとは思っていなかったが……。

次ページいろんな手続きは携帯電話アプリで済むのだが…
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