中国の書画といっても、書いてある字は読めないし、どこをどう見ればいいのかわからない、という人も多いのではないだろうか。
そこで登場してもらうのが、東京国立博物館の研究員、塚本麿充さんだ。塚本さんの話術にかかると、ぼんやり眺めるしかなかった書や絵が、急にくっきり見えてくる。東京国立博物館で9月15日まで開催中の「台北 國立故宮博物院」展から、4つの美術品を紹介してもらおう。
至宝中の至宝!
まずは、塚本さんが「至宝中の至宝!」という、『行書黄州寒食詩巻(ぎょうしょこうしゅうかんしょくしかん)』から見てみたい。故宮博物院で最も大事にされている作品のひとつだというが、どこがそんなにすごいのか?
その理由は2つある。ひとつは、文字が人の気持ちや性格を表していることだ。
「文字というのは、読めるように、きれいに書くことが大切です。世界中の文字は、今もその段階です。ところが、1000年前の中国に変革が起こりました。彼らは、文字はきれいなだけではダメだと考え、文字で自分の気持ちを表せることを発見したのです」
彼らは、文字の造形から気持ちや性格まで読み取れるような書を書いた。文字が芸術になったのだ。
「ほかの国にはなかった、中国らしい芸術です。中国芸術のいちばん大切な飛躍。それを代表するのが、この1点なのです」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら