台湾の「至宝」を見に行ってみた! とっつきにくそうな中国の書画を、今度こそ

✎ 1〜 ✎ 36 ✎ 37 ✎ 38 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2つ目の魅力とは、書かれている中身だ。写真の右側の部分には、蘇軾(そしょく)という人が詩を書いている。彼は官僚であり、詩を作り、書画をたしなむ文人だった。役人生活では恵まれず、政争に巻き込まれて2度も流罪となり、田舎に左遷された。それでも、行った先々で楽しみを見つけて生きていた。

「逆境に負けない蘇軾は、文人の中でもトップクラスの人気を誇ります。天才で豪放磊落で楽しい人。みんなが大好きなスーパースターです。中国では、どんなにきれいな絵や書を書いても、裏で悪いことをしたり、嫌な人だったりすると尊ばれません。芸術でも人格が重視されます。自分の仕事で世の中をよくしようという理想があり、友達がたくさんいて、詩文や書画も堪能な人があこがれなのです」

ここには、蘇軾が黄州に流されたときの詩が書かれている。日々の食べ物にも困る暮らしぶりだった。

黄州に来て3度目の寒食節が過ぎた。春の雨は水かさを増して戸口に迫っている。雨の勢いは収まりそうにない。粗末な野菜を煮ようと、壊れたかまどに湿った葦の葉をくべる。ふと見るとカラスが紙銭をくわえて飛んでいる。きょうは火を焚かずに冷たいものを食べる日(中国の風習)だと気づいた。といった内容だ。

「悲しい詩ですが、文字を見ると、ただ悲しいだけではなく、その奥には人生を肯定するような力強さがある。そこがかっこいい。中国の文人は、流されたり、皇帝から怒られたりすると、蘇軾のことを思い出して、自分も頑張ろうと思うわけです。僕もこの字を見ていると元気が出ます」

ちなみに、蘇軾はおいしいものが大好きだったそうだ。豚の三枚肉を煮た東坡肉(トンポーロー)は、彼が黄州で考えたものだと言われている。蘇軾の号が「東坡」だったことからつけられた。

次ページまるで現代の組織と同じ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事