前回から2回にわたりお届けしている、アンリアレイジ 森永氏のインタビュー。前編では、森永氏が服作りを始めたきっかけなどを中心にお伝えしました。後編では、その独特な発想を形にするまでのプロセスや仕事論などをお伺いします。
非日常的アプローチで日常に迫る、アンリアレイジ
――アンリアレイジといえば、“特殊な服”というのが評価されているポイントのひとつですが、その着想はどこから、そして、どうやって具体化するのでしょうか?
毎回、テーマを定めてやっているのですけど、このコレクション(AW14)のときは、色をテーマにしています。
色をテーマにして洋服を売るというのが、ひとつのファッション業界の大きい流れで、流行色を作って、赤なら赤を売って、消費して、というサイクルの中でのビジネスなのですが、そこにはまらないものを作らないといけないな、と思っています。
たくさんの色がでてきているし、色彩のセンスがある人なんて世界にたくさんいますから、新しい色の中で競うと、僕らは絶対負けてしまうので、全然違う手法で作れないかな、と思っていました。色は何でもよかったのです。赤でなくても。赤でも青でも、何でもいいので、色が染まったり、色が抜けたり、ずっと陽にあたっていたら色がおちてしまったりとか、そういう洋服における色の変化というものを一瞬で行えるような、その構造をすごく作りたかった。
そして、(用いたのは)フォトクロミックという技術なのですけど、この技術はサングラスで用いられたり、化粧品会社がUV防止でちゃんと(紫外線を)防止できているかどうかをチェックするためのチェックシートで使われてます。紙媒体の印刷にもあったので、それを洋服にできたら、可能性はあるなと思っていて。そこから、本当にそんなことできるか、何度もやってという感じでした。
――工場といろいろ話しながら?
そうです。でも、そのフォトクロミックというインクの開発をしている工場は、インクの開発をしているだけで、染色は染色の工場です。その工場は、新しい染色をやれる工場ではなくて、伝統的なものをやっているところだったのです。
インク自体の技術もすごいのですけど、それを洋服に転色させるという技術も、すごく今の日本はいいものを持っているのです。そこを、つなげてあげられるブランドとか、人がなかなかいないのです。自分とは遠い世界のものだと思っているし。それで、両方に頭を下げて、これを洋服用にしたいということと、このインクを使って染めたいという話をしました。
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