――そういう挑戦がすごいですね。ちなみに、森永さんが個人的に気に入っているコレクションは、どれですか?
個人的に僕が好きなのは、「◯△□」(まるさんかくしかく)のコレクションです。球体、三角錐、立方体、という身体とは異なる立方体の服を発表しました。これは、一見パッとみると、全然、洋服じゃないような形をしていますが、全部、人が着られるように設計されています。
洋服は、まず体という原型があり、体に沿わせることが前提とされています。それを、身体から引き離しまったく別の形に造形することで、原型自体に対する問い直しを行いました。
人が着ているときは、その人の身体なりのドレープの洋服になって、値段もすごく抑えられています。
これ(※上記写真のいちばん番左、最前列)も、ただのニットの洋服ではなくて、もともとこれが球体からできた洋服だったということで、同じものでも見え方が全然違ってくる。あと、サイズを問わない洋服なので、本当に小さい子から年をとった方まで着られるようになっています。
立体のときは、誰の体にもあわないような洋服ですが、誰にもあわないということは、誰もが着られる可能性がある、ということにもつながります。
全然人と違う軸に対してのモノ作りをして、それを人が着られるようにしています。一つひとつで違う価値が生みだせるかどうかなという、洋服で今まで本当に起こっていなかったことを起こしてみたいという……。
――それが、森永さんの服作りのコンセプトですか?
そうですね。洋服に今まで起こっていないテーマを設けて、そこから物語をつくって、違うものに変化していく。
――以前とある記事の中で、森永さんは服作りの中で“破壊する”というような内容のことをおっしゃっていましたが、どういうことなのでしょうか?
壊し方が、人と違うと思うんですよね。洋服を破壊するってきくと、穴をあけたり、破ったり、ひねったり、ずらしたり、などがありますけど、そうではない壊し方。アンリアレイジにおいて重要なことは、洋服の常識を疑うことです。当たり前であることに疑いをかけて、覆してみたいと思っています。”人の身体”を問い、”色”を問い、”サイズ”を問い、”季節”を問い、概念そのものをゆさぶる。
――そこで新しいものを創りだす、あるいは、そこから生みだすということですか。
概念が壊れれば、もう生まれちゃうので、新しいものは。
――そして、それがきちんと着られる服にもなっている、というのがアンリアレイジさんのこだわりですよね。
そこをすごく追求しているのです。すごくアートピースに見られて、アーティスト的な扱いが多いのですけど。アーティストとか、科学者とか。でも、そういうのを一回経由して、洋服に戻ってきているというのが、いちばん重要。
――着られる服ということを、絶対に外さない。
絶対ですね。着られる服というか、着て成立する服。
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