最近のシリコンバレーでは、デザインへの関心が高くなっている。
スマートフォンのアプリは、見た目がスマートでなければ共感を得ないし、来たるべきウエアラブルコンピュータなどのプロダクトも、まずおしゃれでなければ関心を向けてもらえない。これまではエンジニアリング一本だったこの地にも、デザインがどれほど大切なものかが浸透してきたのだ。
だが、見た目のデザイン以上にもっと大切なデザインがある。それは「デザイン思考」と呼ばれる、目に見えないデザインの方法だ。
大手企業のデザインを手掛ける、スタンフォード大教授
デザイン思考とは、デザインをする際に行う思考の手順である。この時のデザインというのは、製品やファッションなどモノのデザインに限らず、組織のあり方や新しいビジネス、カスタマーサービスの方法など、エクスペリエンスや潜在的な力を生むための状態などを対象としたものである。
シリコンバレーのテクノロジー関係者の間でも、どんなテクノロジーやサービスが必要とされているのか、どんな組織が適切なのか、どういった環境がふさわしいのかといったことを考える際に、このデザイン思考が用いられている。そして、それを最初に提唱したのが、デイヴィッド・ケリーだ。
ケリーは、スタンフォード大学の教授であり、またIDEO (アイディオ)というデザイン会社の共同創設者として知られている。IDEOは、P&Gやマイクロソフト、ブリティッシュ・エアウェイズなどをクライアントに持つグローバルなデザインおよびコンサルタント会社だ。また、スタンフォード大学では、イノベーション的思考をサービスや発展途上国の問題に適用して、新しいビジネスを興す人材を育てることで知られる、Dスクールを創設した中心人物のひとりだ。
その彼がデザイン思考を最初に思いついたのは、2003年のことだったという。
それまで、デザイナーは製品のかたちをデザインするものと信じられてきた。製品をデザインするには、性能やコスト、見た目の感じさえわかっていれば十分と思われがちだ。だが、本来のデザインはそうではない。
その製品が使われる環境、ユーザーの生活などをじっくりと観察したうえでなければ、本当に役立つ製品は生まれない。そして、そうした観察を行った後に、まずは製品のプロトタイプを作り、それを現場で試し、さらに改良を加えることを繰り返して製品のデザインを進めていくのだ。
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