データ・ジャーナリズムは報道を変えるか? 野球から選挙、はたまた環境問題まで

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米国で進むデータジャーナリズムの可能性は?(写真:getty Images)

データを制するものは、世界を制する。

ビッグデータ時代になって、われわれは人々の行動や社会を数値化して理解することが可能になったらしいと感じている。けれども、単純な数字を除けば、いったいそんなデータをどこから見つけてくればいいのかもわからないし、ましてやそんな数字をどうやって扱うべきなのかも知らないというのが普通だろう。

ネイト・シルバーは、そんなギャップのある現代に鮮やかに登場した人物である。シルバーは統計家であり、予想家であり、そしてデータジャーナリストだ。

野球選手のキャリア、大統領選で予想的中

最初に彼が知られるようになったのは、メジャーリーグ選手の成績と将来のキャリアの予想が当たると、野球ファンの間で評判になってからである。

このとき、シルバーは自分が開発したPECOTAというシステムを用いていた。これは、選手の得手不得手や体調などを基にして行っていた今までのどんな予測方法とも異なり、似たような成績を持つ過去の選手と比較し、さらに多くの周辺データを用いることで成り立っていた。野球選手という生の人間に対して、非常に数学的な分析でアプローチしたのだ。

野球で評判になった後、これを大統領選にも応用。2008年の民主党予選や大統領選の際に、微差で結果を的中させた。後にこれがメジャーリーグの予想をやっていたシルバーだということが明らかになり、彼は一躍新しいタイプのセレブとして注目の人になったのである。

シルバーは幼い頃から野球が大好きだったという。そして同じく幼い頃から数学に対する才能を見せていた。そのふたつが合体するのに時間はかからなかった。すぐに、野球の試合や好きな選手のスコアをこまごまと記録するようになっていた。

PECOTAを開発したのは、大学卒業後だ。大手会計事務所にコンサルタントとして就職したが、後で「人生の失敗」と語るほど嫌ったこの職についていた間、余暇の時間を費やしてこの基本を作り上げたのだ。

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