営業が大好き。これぞクリエーティブな仕事 オールアバウト、江幡哲也社長の好き嫌い(下)

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 本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのが、この対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
 第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出しているのか。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が 好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
 第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど、理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」といってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。
 第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。
 こうした好き嫌いの対話を通じて、優れた経営者が戦略や経営を考えるときに避けて通れない直観とその源泉に迫ってみたい。対談の第7回は、情報総合サイトの「All About」を運営する江幡哲也社長にお話を伺った。

 

※ 対談(上)はこちら:イケメンIT社長が、どうしても嫌いなもの

ほかの人にいろんなことを教えるのが好き

楠木:現在、オールアバウトに登録している「ガイド」とよばれる専門家の方々は、何人ぐらいいらっしゃるんですか。

江幡:800人近くの方に登録していただいております。

楠木:ずいぶん多いですね。カバーする分野もあらゆるジャンルにわたっている。

江幡:それはもう、オールアバウトですから(笑)。

楠木:約800人のガイドの方々が、日夜、消費者の「情報の非対称性」を解消するために、情報を提供しているということですね。フェイスブックで知る友達の近況とは違って、内容それ自体が「役に立つ」だったり「面白い」情報に限定されている。

江幡:やっぱり専門家の人の情報は面白いです。だから、私が最も得しているのではないでしょうか。あらゆる情報にアクセスできるわけですから。

楠木:江幡さんは、人に教えることも好きですよね。この前は、旅行に関する情報を教えてもらって、つくづくそう思いました。細かいことまでいろいろと教えてくれますよね。

江幡:自分がヨーロッパを旅行したときに調べたことですね。まず、自分でいろいろと調べるのが好きというのがあります。旅行でも、日程から始まり、訪れる場所など、自分仕様のプランを綿密に立てます。ヨーロッパに行くとなれば、もうヨーロッパ中を検索します。そして、実際に行ってみて、面白かった場所は積極的に他人に教えます。

楠木:江幡さんに教えてもらった中でいちばん印象に残っているのは、フランスのモンブランの近くにあるシャモニーでやるパラグライダーです。

江幡:あれは本当におススメです。まず、標高4000メートルのところまでロープウェーで登って、そこからパラグライダーでふもとまで降りるのですが、1時間くらいパラグライダーで滑空しますからね。しかも、私のときは料金が98ユーロでした。

楠木:こんな体験ができて、日本円で1万5000円以下でしょう。話を聞いて、ちょっとやってみたくなりました。そういう、やった人しかわからないような情報をたくさん教えてもらったわけですが、こういう情報をそれぞれの分野でガイドが提供しているのがオールアバウト。江幡さんはガイドではなくて経営者ですが、わりとガイド体質ですね。

江幡:聖人君子ぶるわけではないのですが、人に教えて喜んでもらうことが好きなんですよ。だから、ホテルのコンシェルジュなんて天職だと思います。

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