成熟社会でも食える4つのエリア 藤原和博(その6)

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過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4分類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー10年後に食える仕事 食えない仕事の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、仕事のプロたちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

【対談(その5)はこちら

――前回の対談では、年収200~400万円の"新中間層"の生き方をテーマに対談していただきました。今回は、「成熟社会の中で成長する産業は何か」について、話を進めていきたいと思います。

渡邉:藤原さんは『さびない生き方』(大和書房)という著書の中で、成熟社会は3つのテーマが大事だと書いています。具体的には、教育、住宅、そして介護を中心とした医療福祉を目指していけば、結構チャンスが多いのではないかと。こうした分野で1万時間経験を積んで、スキルを身につければ、食いっぱぐれるリスクは少なくなりますか?

藤原:比較的有利だと思う。かつてロンドン、パリに住んで、成熟社会とは何かについて学んだとき、その3つの分野が根底から変わらないと、日本はいい成熟社会にはならないと感じたんです。

今の日本の住宅は全然豊かではないし、教育面でも、クリティカルシンキング、思考力を育てる教育がまったくできていない。それから介護についてもまだまだですよね。これから20年経っても、この3分野にはまだ課題が残っていると思う。

だからこそ、これらの分野でシステムの変革に貢献できれば、有利なキャリアを築けるはず。これらの領域の仕事は、インテリジェンスが必要だし、やりかたによっては付加価値も高いので、マグロ問屋のように単純に中抜きされてしまうことはないと思う。

渡邉:ただ、教育も福祉も税金で行う公的なものなので、政府が上から単価を決めてしまいますよね。介護の分野で働く人の多くは、どんなに頑張っても月13万円くらいしか稼げません。努力をして、いくらスキルを身に付けても、上に行けないというか、付加価値を出しにくいという印象があります。経営する側にまわればいいですけれど、現場の人はコキ使われてしまう構造です。

藤原:もちろん今はそういう部分もある。でも、教育も介護も自由に価格を決められる領域が増えてくると思う。たとえば、歯医者でも自由診療の部分がどんどん大きくなっているでしょ。

渡邉:ワタミが介護に出て行くようなイメージですか。

藤原:そう。実際、ワタミの介護事業はすごく成長しているでしょ。今度は中国にも進出するそうだし。

これからは医療や介護の分野でも、いろんな価格帯のサービスが出てくるはず。つまり、価格が一定の公的な医療がある一方で、本当の金持ちは1億円出してでも築地の聖路加病院の最上階に入ろうとする。そして、その2つのサービスの中間として、200〜300万円くらいのコースを準備する企業がたくさん出てくると思う。

そのほかにも、ちょっと体調が悪くて、軽介護が必要な人のためのサービスも増えてくる。たとえば、アシステッドリビングホームといって、医療や介護が必要なときには、すぐに駆けつけてくれるサービスのついたマンションがある。そこに移ってコミュニティで暮らしていく人や、グループホームで暮らす人がどんどん増えて行くでしょう。そういうエリアには、お金も落ちますね。

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