(司会・構成:佐々木紀彦)
――この連載では、「10年後に何が食えるのか?」というテーマで、ジャーナリストの渡邉正裕さんが各界の仕事のプロにインタビューを行います。第1回目のゲストは、リクルート出身で杉並区立和田中前校長の藤原正博さんです。藤原さんは、民間・公共の双方での勤務経験があり、『人生の教科書』シリーズ、『35歳の教科書』など、キャリア、教育に関する多くの本を出されています。
渡邉:これまでに藤原さんは、何冊の本を出版されているんですか?
藤原:1997年に出版したデビュー作の『処生術』に始まって、これまで65冊です。65冊出して、合計でやっと100万部超えたところ。本当に、なんというか、苦しい戦いですね(笑)。
渡邉:いや、すごいです。
藤原:15年かけて、やっと100万部。『処生術』と『人生の教科書[よのなか]』が売れたので、もっとラクに100万部いけると思ったんですが、甘かったですね。
日本にはもう平均なんて存在しない
藤原:渡邉さんの『10年後に食える仕事、食えない仕事』はすごくよい本。本当に10万部いくだけの理由があると思いますよ。時宜を得てもいたし、カラーの表が非常にはっきりしいて、ものすごくわかりやすい。
本の中身について語る前に、一つ言っておきたいいちばん大事なことがあります。それは、いまだに日本人が「真ん中に平均的な集団がいる」という前提を信じていることなんです。言い換えれば、日本人は、「平均的な集団が生き残れる」という前提で人生を生きているんですよ。
たとえば、新聞はいまだに平均値のデータを出して大騒ぎしていますけど、実際のところ、その値はものすごく分散しています。トップのほうには、すごくお金持ちで、10万円、100万円あったら平気で使ってしまうような人がいる。その一方で、年収が100万~200万円ぐらいしかない人たちもいる。そういうふうに社会の分散がどんどん激しくなっているんです。
この分散化が始まったのは、日本の経済成長がピークアウトした1997年ごろ。この年には、山一證券と北海道拓殖銀行の倒産もあったわけですよね。その翌年の98年から、日本の1人当たりの個人消費は一貫して下がっています。その少し後から、国内の車の販売もずっと下がり続けています。
私は、この98年から日本が成熟社会に入ったと言っているんですけど、98年からハネ上がっているデータが1つあります。それは年間の自殺者数なんです。97年まで二万数千人で推移していたものが、いきなり三万数千人に跳ね上がった。それが14年間下がっていません。