エリート以外の99%はコミュニティが仕事場 藤原和博(その1)

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過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4部類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っておけばよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー10年後に食える仕事 食えない仕事の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、"仕事のプロ"たちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

――この連載では、「10年後に何が食えるのか?」というテーマで、ジャーナリストの渡邉正裕さんが各界の仕事のプロにインタビューを行います。第1回目のゲストは、リクルート出身で杉並区立和田中前校長の藤原正博さんです。藤原さんは、民間・公共の双方での勤務経験があり、『人生の教科書』シリーズ、『35歳の教科書』など、キャリア、教育に関する多くの本を出されています。

渡邉:これまでに藤原さんは、何冊の本を出版されているんですか?

藤原:1997年に出版したデビュー作の『処生術』に始まって、これまで65冊です。65冊出して、合計でやっと100万部超えたところ。本当に、なんというか、苦しい戦いですね(笑)。

渡邉:いや、すごいです。

藤原:15年かけて、やっと100万部。『処生術』と『人生の教科書[よのなか]』が売れたので、もっとラクに100万部いけると思ったんですが、甘かったですね。

日本にはもう平均なんて存在しない

藤原:渡邉さんの『10年後に食える仕事、食えない仕事』はすごくよい本。本当に10万部いくだけの理由があると思いますよ。時宜を得てもいたし、カラーの表が非常にはっきりしいて、ものすごくわかりやすい。

本の中身について語る前に、一つ言っておきたいいちばん大事なことがあります。それは、いまだに日本人が「真ん中に平均的な集団がいる」という前提を信じていることなんです。言い換えれば、日本人は、「平均的な集団が生き残れる」という前提で人生を生きているんですよ。

たとえば、新聞はいまだに平均値のデータを出して大騒ぎしていますけど、実際のところ、その値はものすごく分散しています。トップのほうには、すごくお金持ちで、10万円、100万円あったら平気で使ってしまうような人がいる。その一方で、年収が100万~200万円ぐらいしかない人たちもいる。そういうふうに社会の分散がどんどん激しくなっているんです。

この分散化が始まったのは、日本の経済成長がピークアウトした1997年ごろ。この年には、山一證券と北海道拓殖銀行の倒産もあったわけですよね。その翌年の98年から、日本の1人当たりの個人消費は一貫して下がっています。その少し後から、国内の車の販売もずっと下がり続けています。

私は、この98年から日本が成熟社会に入ったと言っているんですけど、98年からハネ上がっているデータが1つあります。それは年間の自殺者数なんです。97年まで二万数千人で推移していたものが、いきなり三万数千人に跳ね上がった。それが14年間下がっていません。

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