エリート以外の99%はコミュニティが仕事場 藤原和博(その1)

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つまり、日本は98年から成熟社会に入って、もう14年が過ぎている。「みんな一緒」の社会から「それぞれ1人」の社会へと多様化が進んでいる。それなのに、そのことを自民党の人も民主党の人もまったくわかってないんじゃないかと思う。野田首相はいまだに「分厚い中間層の復活」といったバカなことを言っているわけですよ。

藤原和博(ふじはら・かずひろ)
杉並区立和田中学校・前校長 
東京学芸大学客員教授
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08~11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書に、人生の教科書シリーズ、リクルートという奇跡つなげる力等。最新刊の坂の上の坂が10万部を超すベストセラーに。
 

日本の中間層は分解し始めてからもう14年間経っていますから、もうほとんど分解済みですよ。

渡邉:ところが、多くの日本人は、昔に戻したいと思っている。

藤原:そう、戻したい。もしくはまだ「分厚い中間層」がいるという前提で生きている。そこの認識を完全に改めることからまた始めないといけない。

「分厚い中間層がホワイトカラーの事務職に就いて、課長になると年収1,000万円ぐらいもらえる」――そんな世界はもう終わっている。IT化によりどんどん事務処理仕事が消えていくと同時に、それを中国、インドがどんどん安く代替していくわけですから。

にもかかわらず、いまだにその現実をとらえきれていないところが、実にむなしいわけですよ。そのことを渡邉さんはこの本で明確に書いている。

仕事の9割は、コミュニティソリューションになる

藤原:グローバルに勝負するエリートというのは、恐らく全体の100分の1か1000分の1、もしかしたら1万分の1かもしれない。こうした人たちは、文句なくグローバルで勝負しないといけないわけで、年収が1億円を超えていいと思うんですよ。10億の人がいてもいいし、100億の人がいてもいい。

では、グローバルで勝負するトップエリート以外の人は、どうするのか? 私は、コミュニティソリューションを担当することになると思う。

これからは、コミュニティが、地域社会という意味だけではなくなってくる。被災地コミュニティでもいいし、ネット上での鉄道オタクコミュニティでもいいんだけど、そのコミュニティの中でどういう貢献をしていくのかっていうのが、コミュニティソリューションになる。コミュニティコントリビューションといってもいい。

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