産業化時代の幕開け以降、技術革新は大量の失業を生むとおそれられてきた。が、新古典派経済学者は、適応には時間を要するにせよ、人々は新たな職を見つけられると予想してきた。概してこの予想はこれまでのところ当たっている。
産業革命から200年にわたる息をのむような技術革新は世界の多くの場所で普通の人々の生活水準を引き上げたが、それで失業が急増するようなことはなかった。圧倒的な不平等や、凄惨(せいさん)さを増す戦争などこれまで多くの問題が起きてきたものの、総じて世界の多くの地域で人々は以前より長生きし、働く時間も短くなり、より健康的な生活を送れるようになった。
が、今や技術の進歩は速度を増しており、今後深刻な混乱を招く可能性も否定できない。経済学者のワシリー・レオンチェフは1983年の論文で、あまりに速い技術革新に多くの労働者は適応できず、自動車が普及した後の馬のように用済みになるとの懸念を示した。将来的に数百万人の労働者が馬と同じ運命をたどるようなことがあるのだろうか。
すでに、中国を含めアジアでは賃金上昇に伴い、工場長たちが従業員をロボットと入れ替える機会をうかがっている。廉価なスマートフォンの登場はインターネットの爆発的な普及につながり、オンラインショッピングの拡大で膨大な数の販売職が奪われている。簡単な計算でわかることは、技術革新によって世界全体で毎年500万~1000万人の失業が発生しうるということだ。が、今までのところ、市場経済はこうした変化の影響を驚くほど柔軟に吸収している。
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