各地で「整備新幹線建設が進まない」根本的な理由 誰も気づかない、工事費上昇よりも根深い問題
国内各地で建設中の3つの整備新幹線が当初計画どおり進んでいない。北陸新幹線・敦賀―新大阪間は、いったんは敦賀駅から小浜市を経由して京都駅、新大阪駅に至る小浜・京都ルートで決まったが、建設費の高騰や環境への影響が懸念され京都で反対運動が起きている。
北海道新幹線・新函館北斗―札幌間は難工事により、2030年度とされていた完成時期は8年以上遅れる見通しだ。そして、西九州新幹線・新鳥栖―武雄温泉間は佐賀県の反対によりいまだにルートすら決まらない。
こうした事態になっているのはなぜか。2023年まで東洋経済オンラインで「新幹線は街をどう変えるのか」を連載し、現在も全国各地を訪問して新幹線の運営状況や整備新幹線計画がもたらす経済・社会への効果について研究を続ける櫛引素夫・青森大学教授に話を聞いた。
府県間の「対立関係」解決手段がない
――整備新幹線の計画が進まない現在の状況をどう捉えていますか。
とくに北陸新幹線のルート問題で顕著だが、プロジェクトをめぐって府県間に対立関係が生じたときに、それを制度的に解決する手段が存在しない。どうやって合意形成を図るかという手順がないのが問題だ。
――たとえば北陸新幹線の敦賀―新大阪間のルートをめぐる問題では、米原ルートを推す声が石川県を中心に出ています。石川県は敦賀―新大阪間ルートの当事者ではないのに、なぜその発言が重視されているのでしょうか。
北陸新幹線が2015年に金沢へ延伸されたときに富山県がなめた苦渋を今、石川県がなめている。それまで富山から大阪まで特急サンダーバード1本で行けたのに、それができなくなってしまった。富山の人たちには非常に不便で、多くの批判が出た。



















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