各地で「整備新幹線建設が進まない」根本的な理由 誰も気づかない、工事費上昇よりも根深い問題
日本はこれだけ人口が減少し、しかも都市への偏在が加速している上、高齢化が進んで、経済力も衰えている。日本がいわば青年期から老年期に向かっている環境下で、新幹線ネットワークが地域課題の何を解決できて、何を解決できないのか。時代の変化に合わせた検討は適切に行われているのだろうか。
北海道新幹線・新函館北斗―札幌間の工期が一気に8年も延びたのは、高度経済成長期と同じことをしてもうまくいくはずがない、という現実の一面でもある。次世代半導体の量産を目指すラピダスが道内で大型の工場を建設している影響もあり、今の北海道は作業員不足や資材不足が深刻化していると聞く。工期がずるずると延びていかなければいいが……。
――高度成長期のスキームをもう維持できないというのは至極当然な意見ですね。
でも、意外にもそのことを主張する人は少ない。その一方で、日本に本格的な人口減少社会が到来し、さらなる縮退が見込まれる中で、国を国として今後、維持するために最低限、どんなインフラが必要なのか、という、現実を踏まえた議論も厚みがない。新幹線の意義を論じる議論の置き場所がない印象だ。
西九州新幹線の将来は?
――西九州新幹線・新鳥栖―武雄温泉間はいかがでしょう。佐賀県は費用負担してもメリットがないばかりか、在来線の利便性が悪化しかねないとして反対しています。地方にも建設費を負担させる整備新幹線のスキームが現代にそぐわないのでしょうか。
佐賀県は関東でいうところの埼玉県のような立ち位置で、福岡県の近郊にあるので新幹線がなくてもやっていける、という世界観を感じる。大阪とつながることを目指す長崎県とは、手にしている地図が違う。それでも、日本が上り坂だった20世紀だったら、新幹線が来れば地元にもいいことがあるに違いないと、将来像が不透明なまま造れたかもしれない。だが、今はあらゆる面で、社会に余裕がなくなっている。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら