各地で「整備新幹線建設が進まない」根本的な理由 誰も気づかない、工事費上昇よりも根深い問題

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――このまま未完成でもしょうがない?

それは避けたい。北陸新幹線にせよ、西九州新幹線にせよ、未完成でも仕方ないと思っている人はほとんどいないのではないか。とはいえ、相容れない主張が重なり、打開策が見えない。

さらに、日本全体の、いわばライフサイクルの移行もある。日本の苦境が新幹線問題に、象徴的に表れているようにも見える。鉄道の問題を鉄道の問題として扱うのはとても大事だが、鉄道の周辺にある社会や経済や政治の問題を見ていかないと、解決どころかアリバイづくりの提案と議論に終始しかねない。

西九州新幹線
2022年9月に長崎―武雄温泉間が開業した西九州新幹線(撮影:尾形文繁)
【写真をもっと見る】西九州新幹線の開業日、長崎駅を発車する1番列車や車両基地にならぶ「かもめ」の姿、北海道新幹線、北陸新幹線など各地の整備新幹線

「新幹線建設」が目的化するのは危うい

――整備新幹線以外に、北海道新幹線の旭川延伸、四国新幹線、東九州新幹線といった次の新幹線を造るという計画もありますが、国では新幹線よりも安上がりなプロジェクトとして、線路や車両の改良による在来線特急の高速化も検討しています。

「国家100年の計」という視点で見れば、新幹線がまだ走っていない地域に造るべきという考え方はありうる。旭川、大分、宮崎といった、新幹線の基本計画がある地域に講演に出向いた際には「新幹線を造りたいというビジョンは大切にするべき。未来のデザインに役立つ」と提起してきた。

ただ、新幹線が走り出すかもしれない「早くとも今から30年後」に旭川や大分、宮崎の人口構成はどうなっているのか。しかも、工事費用は大きく膨らんでいる。そのような環境を考えれば、また、「持続可能な地域づくり」が最も重要なポイントとすれば、地域政策として、新幹線が持ちこたえられるかどうか。新幹線を望んでいる人々の思いを度外視すれば、在来線特急の高速化という選択肢も検討対象となりうるはずだ。

それでも、全体的に新幹線へのこだわりは強い。しかし、新幹線の建設自体が目的化してしまう状況は最も危うい。大都市はともかく、地方都市は、低空飛行でもいいから墜落しないような、持続可能な社会をつくることを強く意識する必要があるのではないだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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