ひとりで暮らす人の家から、その生き方をのぞく連載「だから、ひとり暮らし」。
ひとり暮らしは未婚者だけの暮らしとは限らない。パートナーや家族と暮らしていた人が、ひとりに戻ることも、人生では珍しくない。
今回登場いただく杉江あこさんは、昨年2月に伴侶を亡くした。
長く暮らした練馬区の3階建ての家を手放し、この春、坂が多い、都心寄りのエリアのマンションに移り住んだという。
坂の上の家で「夫亡き人生」を受け止める日々
杉江さんの家へは、緩やかな坂を抜けてゆく。
ふもとには賑やかな商店街があり、坂を上り切ると古くからの住宅地へとグラデーションでつながる。杉江さんのマンションは築約50年。歴史ある街に、しっくりと馴染む外観だ。
部屋に入ると、まず目に映るのは天井まで伸びる本棚。美術や工芸、デザイン関係の背表紙が整然と並び、住み手の造詣の深さを物語る。
杉江さんは編集・ライティングの仕事をし、夫とともに「意と匠研究所」という会社を運営していた。
「夫亡き今は会社を継続すべきか迷っているんです。今のところ2人で携わっていたプロジェクトが残っているので、私がひとりで行っていますが……」(杉江あこさん、以下の発言すべて)
夫は杉江さんより10歳年上。有名なデザイン雑誌の編集長まで務めた人物で、前職を早期退職してからは地域の伝統工芸・地場産業、企業プロジェクトなどのデザインプロデュースや編集業を行っていたという。




















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