「今も心に残る空虚さ。でもひとりに戻っただけ」——。61歳で旅立った10歳年上の夫《前へ進むための"ひとり暮らし"》再出発の部屋

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杉江あこさん
昨年夫を亡くした杉江あこさんは、一軒家をひきはらい築50年のマンションに引っ越した(撮影:今井 康一)

ひとりで暮らす人の家から、その生き方をのぞく連載「だから、ひとり暮らし」。

ひとり暮らしは未婚者だけの暮らしとは限らない。パートナーや家族と暮らしていた人が、ひとりに戻ることも、人生では珍しくない。

今回登場いただく杉江あこさんは、昨年2月に伴侶を亡くした。

長く暮らした練馬区の3階建ての家を手放し、この春、坂が多い、都心寄りのエリアのマンションに移り住んだという。

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杉江あこ(すぎえ・あこ)/エディター、ライター。1973年愛知県生まれ。大阪芸術大学卒業後、フリーライターとして活動し、デザイン、アート、文芸、食、自然環境などの分野で編集・執筆を手がける。2008〜2009年に『日経デザイン』編集に携わり、2014年に「意と匠研究所」を共同設立。2018〜2021年度に東京造形大学非常勤講師、2024年度から常葉大学非常勤講師を務めるなど、大学で教鞭も取る。2024年にゼロリノベで新居を購入・リノベーションした(撮影:今井 康一)

坂の上の家で「夫亡き人生」を受け止める日々

杉江さんの家へは、緩やかな坂を抜けてゆく。

ふもとには賑やかな商店街があり、坂を上り切ると古くからの住宅地へとグラデーションでつながる。杉江さんのマンションは築約50年。歴史ある街に、しっくりと馴染む外観だ。

だから、ひとり暮らし
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部屋に入ると、まず目に映るのは天井まで伸びる本棚。美術や工芸、デザイン関係の背表紙が整然と並び、住み手の造詣の深さを物語る。

杉江さんは編集・ライティングの仕事をし、夫とともに「意と匠研究所」という会社を運営していた。

「夫亡き今は会社を継続すべきか迷っているんです。今のところ2人で携わっていたプロジェクトが残っているので、私がひとりで行っていますが……」(杉江あこさん、以下の発言すべて)

夫は杉江さんより10歳年上。有名なデザイン雑誌の編集長まで務めた人物で、前職を早期退職してからは地域の伝統工芸・地場産業、企業プロジェクトなどのデザインプロデュースや編集業を行っていたという。

【写真】杉江さんのひとり暮らしを写真で(16枚)
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