今後のことを聞いてみると、杉江さんは穏やかに言った。
「猫と一緒に、のんびりと暮らしていきたくて。とても気に入っている地域なので、ここに根を張って、暮らしを楽しむつもりです。
この土地はお祭りが多いんですよ。それも気に入っているところです。先日お祭りで踊っている人の後ろで、お囃子を演奏している地域の方がいました。私もそんな活動に参加できたら、楽しそうだなと思っています」
静かな部屋だが、耳を澄ませると遠く坂の下の商店街のざわめきが聞こえてくる。古くて活気のある街。杉江さんは、この環境がとても気に入っているのだ。
「夫を亡くして、今でもふとしたときに空虚さを感じたり、闘病中の様子を思い出したりして涙が出てくる。でもそういう寂しさと、ひとり暮らしの寂しさは別ものですね。私の場合は、ひとり暮らしは、むしろ心地がよい。ずっと慣れ親しんだひとりという状態に、戻ってきたなという感じです」
人生は、人との出会いによって形を変えていく。思いがけない出会いの喜びもあれば、避けられない別れもある。けれど、どんなときも“ひとりの自分”に立ち戻れるからこそ、別れを受けとめながら次の出会いの糧にしていけるのだと、杉江さんの話を聞きながら思った。
心地よく暮らせる「私らしい」家
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