
眼述記 全身マヒになった夫が文字盤で最初に示したのは「さわるな」の4文字だった。(髙倉美恵 著/忘羊社/1925円/264ページ)
[著者プロフィル]髙倉美恵(たかくら・みえ)/1965年生まれ。京都府立東稜高校卒業。83年から京都、福岡、山口、東京などの3書店(9店舗)で勤務。新聞連載などライターとしても活動している。著書に『書店員タカクラの、本と本屋の日々。…ときどき育児』。
耳慣れない眼述とは著者の造語だ。50代を目前にした2014年、2歳年上の新聞記者の夫が脳梗塞で倒れる。脳内出血を併発して意識不明が続き、ようやく言葉を交わせたときには発症から100日以上経っていた。
ここでの「言葉」は、口を動かして発声するのではない。ベッドに横たわった夫が、アクリル板に五十音の書かれた「文字盤」上の文字を一字一字目で追い、その動きを読み取ることで交わす「言葉」だ。後遺症で全身が麻痺(まひ)した夫にとって、それが意思疎通の唯一の手立てとなった。
このようにして始まった新たな生活における夫との「会話」を、全国紙の地方版に7年間にわたり連載、書籍化したのが本書である。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
(残り 1003文字 です)
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら