失われる“先進国生まれプレミアム”
「日本はグローバル化すべきか」との問いに、グラットン教授は「難しい問題だ」と答えた。グローバル化は、先進国の中間層の人たちの収入と職を失うことを意味するため、日本があえて“血だらけの赤い海”に突っ込むことを、さすがに肯定しなかった。
2025年の「日本以外の」世界が、『ワーク・シフト』に描かれた景色に近いという点には同意する。すなわち、世界規模で人材市場の統合が進み、英語を共通語として、地球の反対側同士でウェブを通じた協働が増え、上位の優秀層は生まれた国を問わず大活躍するチャンスが増える。一方、先進国の中間層以下は“先進国生まれプレミアム”が失われ、新興国の人材に浸食される形で、賃金が下がる。
日本も、その一員となるべきか?拙著『10年後に食える仕事 食えない仕事』で示した、現就業人口の約61%を占める「外国人と競合しない」職(たとえば、住宅・保険営業など)で中間層が生き延びる可能性について、グラットン教授は「日本のほうが賢明かもしれない」と理解を示す一方で「閉ざされた状態の日本の未来には賛成しかねる」と述べた。
これは教授の研究テーマだそうで、著書でも「多様性は単一文化を凌駕する」との持論を述べている。対談でも、多様な人種のシナジーで新事業が生まれるとされたシリコンバレーを例示した。